現在、中東には世界のエネルギー供給を脅かす二つの重大なチョークポイント(隘路)が存在しています。
ホルムズ海峡は世界の石油輸送の約20%、LNGの相当量が通過する極めて重要な航路です。しかし、2026年2月28日に米国とイスラエルがイランに対して航空戦を開始して以来、同海峡の石油タンカーの通行は事実上停止状態にあります。7月9日時点で、前日までに海峡を通過したタンカーはわずか2隻でした。
ブルッキングス研究所の報告によれば、ホルムズ海峡を通過する船舶に対する保険の提供は事実上停止され、入手困難または法外な高額になっています。船員も渡航を拒否しており、同海峡は「事実上閉鎖」されていると評価されています。ブルームバーグの試算では、ホルムズ海峡の閉鎖により世界の石油流通量は1日あたり約1100万バレル減少しており、補完措置を考慮しても約900万バレルの供給不足が生じているとされています。
フーシ派による封鎖宣言は、第二のチョークポイントへの脅威を現実のものとしました。バブ・エル・マンデブ海峡とホルムズ海峡が同時に脅威にさらされる事態は前例がなく、サウジアラビアの同海峡経由の原油積載量はわずか2週間で36%も急減しました。専門家は、バブ・エル・マンデブ海峡が完全に閉鎖された場合、世界の原油供給の約7%が失われると試算しています。
二つの海峡の同時危機は、世界の石油供給の大規模な混乱を引き起こしています。ホルムズ海峡単独でも世界の石油輸送の約20%を担っていたことを考慮すると、両方の危機が重なることで、世界の石油供給の約4分の1(25%前後)が脅威にさらされていることになります。
世界銀行はホルムズ海峡の混乱を「史上最大の石油市場ショック」と表現し、2026年3月には世界の石油供給が1日あたり1010万バレルも急減したと報告しています。
この一連の緊張を受けて、ブレント原油は2026年7月23日に1バレル100ドルを突破しました。これは同年5月以来の高値です。フーシ派によるサウジタンカー2隻へのドローン・ミサイル攻撃が直接の引き金となりました。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、イランが米国の停戦提案を拒否したことを受け、7月24日時点でも原油価格は100ドル近辺で高止まりしています。
複数の専門家は、もし混乱が長期化すればブレント原油は1バレル120ドルを超える可能性があると警告しています。
サウジアラビアはホルムズ海峡の閉鎖を受けて、従来のペルシャ湾経由の輸出に代わり、紅海に面したヤンブー港からの輸出に切り替えていました。同港からスエズ運河経由で欧州へ、あるいはバブ・エル・マンデブ海峡経由でアジアへ向かうルートは、サウジにとって「最後の生命線」とも言えるものでした。
しかし、フーシ派の封鎖宣言により、この代替ルートも直接的な脅威にさらされています。バブ・エル・マンデブ海峡が封鎖され、ホルムズ海峡も事実上閉鎖されたことで、サウジの輸出は長距離の喜望峰回りか、ほぼ完全な輸出停止という厳しい選択を迫られています。
複数の報道機関が引用する専門家の分析によれば、有意義な和平交渉への転換がなければ、石油価格はさらに上昇を続けると予想されています。イランは7月下旬に米国の停戦提案を拒否し、米国もイランに対する海上封鎖を再実施するなど、両国の敵対関係はさらに激化しています。
この「二重のチョークポイント危機」は、世界経済とエネルギー安全保障にとって前例のない試練となっています。
本記事は、Kpler、ロイター通信、ブルームバーグ、ニューヨーク・タイムズ、ブルッキングス研究所、世界銀行などの信頼できる情報源に基づき、事実確認を行った上で作成されています。