共同生産の取り組みは、2026年7月8日にトルコのアンカラで開催されたNATO首脳会議における政治的突破口に端を発する。首脳会議での二国間会談中、ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナにパトリオット迎撃ミサイルの「製造ライセンスを与える」とゼレンスキー大統領に伝えた。トランプ氏は「我々は君にパトリオット製造のライセンスを与えるつもりだ。なかなか良いだろう?」と述べた。
しかし、複数の情報源は、この約束が曖昧で予備的なものだったと指摘する。トランプ氏自身、関係する米防衛企業(ロッキード・マーティンとレイセオン)と事前に協議していなかったことを認めており、実際の正式なライセンスがアンカラで発行されたわけではない。ウクライナメディアのEuromaidan Pressは、ゼレンスキー大統領がアンカラから持ち帰ったのは「製造開始の権利ではなく、約束」だったと報じている。英ガーディアン紙は、この提案を「曖昧な約束」と表現し、トランプ氏がパトリオット迎撃ミサイルを製造する企業と事前に話をしていなかったと指摘した。
ゼレンスキー大統領は2026年7月15日、「2026年末までに、ウクライナのチームが米国製ミサイルを製造する技術的能力を獲得する見込みだ」と述べている。しかし、国防アナリストや業界関係者は、実際の迎撃ミサイル生産にははるかに長い時間がかかると警告する。
既存のパトリオット・ミサイル整備を行っていたCOMLOG(MBDAドイツとレイセオンの合弁企業)の新たな生産ラインは2026年9月に稼働開始予定で、最初のミサイルは2027年が見込まれている。しかし、ウクライナ防衛産業評議会のイホール・フェディルコ事務局長は、ウクライナ国内での完全な生産サイクルは極めて非現実的とし、段階的な現地化が最も現実的な道筋だと述べている。
楽観的なシナリオでも、業界筋は施設建設に最低でも1年、最初のミサイル製造にさらに2年はかかるとしている。ニューヨーク・タイムズ紙とDefense Newsは、国内での実用的な迎撃ミサイル生産は数年先になると独自に報じている。ノルウェー国防研究所のミサイル専門家ファビアン・ホフマン氏は、ウクライナの組立ラインがフル稼働に達するまでには5年かかる可能性があると指摘する。
パトリオット・ライセンス発表と並行して、アンカラ首脳会議でNATO同盟国は以下に合意した:
国内でのパトリオット生産推進の背景には、深刻化する危機がある。ゼレンスキー大統領は数週間にわたり、ロシアの弾道ミサイル攻撃激化により、ウクライナが迎撃ミサイルの備蓄を枯渇させていると警告していた。アンカラ首脳会議の数日前には、ウクライナはパトリオット迎撃ミサイル不足により、ロシアの弾道ミサイルを1機も迎撃できなかったと発表している。キーウ近郊へのロシアのミサイル攻撃は、同国の防空網が危ういほどに薄くなっていることを浮き彫りにしており、国内でのサプライチェーン構築は存亡の危機となっている。
レイセオンとの基本合意は重要な一歩だが、正式な米国からのライセンスはまだ最終決定されていない。仮に2026年末までに技術的製造能力が獲得されたとしても、ウクライナ国内でのパトリオット迎撃ミサイルの本格的な量産開始は、その時点から12~36ヶ月以上先になる可能性が高い。一部のアナリストは、ウクライナ製最初のミサイルの完成は2029年になるかもしれないと見ている。