ECBは「過去12か月間のインフレ認識の中央値は大幅に低下し、今後12か月間のインフレ期待の中央値も同様に低下した」と発表している 。ロイター通信はこの低下について、「エネルギー価格を押し下げた中東の停戦が要因だが、その停戦は長続きしなかった」と指摘 。ブルームバーグは「6月の調査期間は、中東での新たな戦闘激化による原油高騰の前に行われた」と報じている 。この調査は6月4日から29日にかけて実施され、米国とイランの一時停戦を捉えたものの、その後の崩壊は反映されていない 。
この2か月間の原油価格の軌跡は、ほぼ完全に中東紛争、特に米国とイランの戦争と、ホルムズ海峡の航行に与える影響に対する見通しの変化によって決定づけられた。
6月の米イラン暫定停戦合意により、ホルムズ海峡の原油輸送は大幅に回復した。IEAの2026年7月石油市場報告書によると、北海デイテッド価格は6月の間に1バレルあたり31ドル急落し、7月初めには68ドルまで下落。これは戦争開始前以来の低水準だった 。ブレント原油は、OPEC+が増産目標に合意したことを受け、7月上旬に一時71~72ドル前後で推移した 。
7月7日から8日にかけて、ドナルド・トランプ米大統領がイランとの一時停戦終了を宣言。ホルムズ海峡付近での商船攻撃を受け、米軍はイランへの新たな攻撃を開始した 。イラン軍も報復攻撃に出た。ブレント原油はわずか1日で約7%急騰し、7月8日は1バレル79.07ドルで取引を終了。これは6月19日以来の高値となった 。停戦崩壊により、原油市場は再び混乱に陥った。
7月16日までに、米イラン戦争は「激しさを増す攻撃」でエスカレート。イランはイエメンのフーシ派に対し、紅海の石油ルート封鎖に備えるよう要請した 。7月23日、ブレント原油は1バレル98.49ドルまで急騰。1か月前から実に24.98%もの上昇となった 。ニューヨーク・タイムズ紙は、紛争激化を背景に国際原油価格が5月以来初めて100ドルの大台に乗せたと報じている 。
エネルギー主導のインフレに対するECBの金融政策対応は、主要中央銀行の中で最初に行われ、二つの重要な決定として展開された。
ECBは3つの主要政策金利をそれぞれ0.25%引き上げ、預金ファシリティ金利を2.25%とした 。これは中東戦争を受けて主要中央銀行が実施した初めての利上げだった 。ECBは声明で「中東の戦争が物価を押し上げているため、この決定を行った」と明確に述べている 。この決定は全会一致で、他の選択肢は議論されなかった 。
ECBは7月23日、借入コストを2.25%で据え置き、進行中のエネルギーショックの影響を見極めるために一時停止した 。政策理事会は「エネルギー価格上昇の激しさと期間を注意深く監視している」と声明で述べた 。クリスティーヌ・ラガルド総裁は、9月の「可能性のある行動に備えている」とシグナルを送った 。ロイターが7月16日に発表した74人のエコノミスト調査では、過半数(74人中52人、70%)が9月の今年2回目の利上げを予想している 。市場は9月の2.50%への利上げをほぼ完全に織り込んでいる 。
ECBスタッフの公式予測は、エネルギー主導のインフレが長期にわたり2%目標を大きく上回ることを明らかにした。
ECBの2026年6月スタッフ予測では、総合インフレ率は2026年に平均3.0%、2027年に2.3%、2028年に2.0% となり、インフレは2027年前半まで目標を上回り続けると見込まれている 。7月9日に公表された6月のECB金融政策理事会の議事録では、政策担当者が「ECBがほぼ3回の利上げを行ったにもかかわらず、インフレが来年まで目標を上回り続けるという予測」を示されたことが明らかになった 。6月の金融政策声明では、「インフレは夏場にかけてさらに上昇し、来年も2%目標を大きく上回る」と警告されていた 。欧州議会のブリーフィングノートは、ECBが「中東戦争に起因する新たなインフレ圧力に対応して金融政策を引き締めた世界初の中央銀行」になったと指摘している 。