王虹氏は、ニューヨーク大学(NYU)とフランスの高等科学研究所(IHES)の教授を務める。今回の受賞理由は、幾何学的測度論と調和解析における長年の未解決問題であった 3次元空間における掛谷(Kakeya)予想 を証明したことにある 。この予想は約1世紀前に提唱されたもので、「あらゆる方向の線分を含む最小の集合はどれほど小さくなり得るか」という問いである。2025年2月、王虹氏は共同研究者のジョシュア・ツァール(Joshua Zahl)氏とともに127ページに及ぶ証明を発表し、この3次元の問題を解決した 。
王虹氏は、2014年のマリアム・ミルザハニ氏、2022年のマリナ・ビアゾフスカ氏に続き、フィールズ賞を受賞した史上3人目の女性となった 。これまでにも、2022年のメアリーン・ミルザハニ・ニューフロンティア賞、2025年のサレム賞、同オストロフスキー賞など、数々の賞を受賞している 。
鄧煜氏はシカゴ大学の教授で、偏微分方程式の研究、特に希薄気体の剛体球力学からのボルツマン方程式の厳密な導出により高く評価された 。この成果は、1900年に数学者ダフィット・ヒルベルトが提唱した23の問題のうちの一つ、ヒルベルトの第6問題(物理学の法則を数学の基本原理から導き出せ、という問題)における大きな進展である 。
鄧煜氏は、ザヘル・ハニ(Zaher Hani)氏、肖馬(Xiao Ma)氏らとの共同研究により、微視的な粒子の衝突の振る舞いから、圧縮性オイラー方程式やナビエ-ストークス方程式といった巨視的な流体力学の方程式を結びつける新しい手法を開発した 。2025年までに研究チームは複数の論文で成果を発表し、1世紀以上にわたって人類を悩ませてきた難問を解決した 。この功績により、鄧煜氏は2026年にクレイ研究賞も受賞している 。
パードン氏はニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の教授で、シンプレクティック幾何学および接触幾何学への貢献により受賞した。特に、異なる接触構造を区別するための手法の開発や、超弦理論から生じた問題の解決などが高く評価されている 。彼の研究は多岐にわたる。博士論文はシンプレクティック幾何学における技術的な金字塔であり、結び目理論においても重要な業績を残している 。科学誌Quanta Magazineは、パードン氏について「彼にとって興味深い問題を、ただひたすら解いている」と評している 。
チャイマーマン氏はトロント大学の教授で、数論と代数幾何学を専門とする。氏と共同研究者らは、アンドレ・オート予想(シムラ多様体に関する中心的な予想)と、フィリップ・グリフィス氏が提唱した主要な予想を証明した 。彼の研究は、ディオファントス方程式とシムラ多様体の幾何学を結びつけ、モデル理論の一分野であるo-minimal理論を用いてホッジ予想に関連する問題に取り組むものだ 。チャイマーマン氏が高く評価されるのは、ある数学の分野から手法を「借用」し、それを別の分野で活用することで、驚くべき背後構造を明らかにする点にある 。
公式発表の10日前にあたる7月13日の夜、ICM 2026の公式スケジュールAPIを調べていたユーザーが、ウェブサイトのデータベースで「非表示(HIDDEN)」とマークされたエントリーが、フロントエンドでフィルタリングされずにそのまま返されていることを発見した 。わずか1回のcurlコマンドで、「非表示フィールズ賞記念講演(HIDDEN Fields Medal Lecture)」というラベルの付いた4つの講演記録が表示され、それぞれに鄧煜、ジョン・パードン、ジェイコブ・チャイマーマン、王虹の名前が添えられていたのである 。
この発見は瞬く間に中国語圏のプラットフォームで拡散され、予測市場では4人の名前が確定する確率が98%以上に跳ね上がった 。ICM側は直ちにウェブサイトを閉鎖して該当エントリーを削除したが、スクリーンショットはすでに広く出回っていた 。一部の報道では、このリークがAIによるコード生成ツール(Codex)によってもたらされたとされ、セキュリティ上のミスに現代的な味付けを加える形となった 。