Wall Street Journalが関係者の話として報じたところによると、Redditの経営陣はGoogleのAI向けアクセスを全面的に遮断する可能性について議論したという。Redditはすでに2024年半ば、最新の投稿を多くの検索エンジンからブロックする一方、ライセンス料を支払っているGoogleだけを例外とする措置を導入している。今回の再交渉では、その「壁」をGoogle自身にも及ぼす可能性が浮上しているのだ。
投資家の反応は即座だった。WSJ報道が出た2026年7月22日、Reddit株は**9%**急落した。年額6000万ドルのライセンス収入はRedditにとって極めて重要な収益源であり、一部のアナリストは複数のライセンス契約の総額を5億5000万ドルと試算していただけに、市場の衝撃は大きい。
Redditは7月30日に2026年第2四半期決算を発表予定であり、経営陣に対して契約の行方を明確にするよう圧力が高まっている。
Redditは孤立した動きではない。WSJの報道は、GoogleのAI検索要約が参照トラフィックを奪う中、多くの主要メディアが同様の措置を検討していると伝えている。
共通の不満は明快だ。GoogleのAI概要(AI Overviews)が検索結果ページ上で直接ユーザーの質問に回答してしまうため、元のパブリッシャーのサイトをクリックするインセンティブが激減する。それでいながらGoogleは、そのパブリッシャーのコンテンツをAIモデルの学習に使い続けている。
Googleは自社のAI機能が「毎週数十億ものクリックをウェブに送っている」と主張している。
Googleをブロックすることには、痛みを伴うトレードオフがある。パブリッシャーが自社コンテンツをAI検索に使わせないためのタグ("nosnippet")は、同時に通常の青リンク検索結果にも表示されなくなる。つまり、AI検索を拒否すれば、事実上Google検索から姿を消すことになる。検索トラフィックに大きく依存するメディアにとって、これは死活問題だ。
それでも状況は変わりつつある。「我々はあらゆる選択肢を検討している」と、Reutersの幹部はWSJに語っている。AI検索によって失われるトラフィックからの収益が、Googleが今も送ってくるトラフィックの価値を上回り始めたと考えるパブリッシャーが増えているのだ。
大きな転機となる可能性があるのが規制当局の動きだ。2026年6月3日、英国の競争・市場庁(CMA)は、デジタル市場における競争枠組みに基づき、Googleの検索サービスに新たな要件を課した。
この規則により、Googleは英国のパブリッシャーに対し、自社コンテンツがAI機能に使用されることを拒否(オプトアウト)する権利を与えなければならなくなった。パブリッシャーはGoogle Search Consoleの新しいトグルを使って、AI Overviews、AI Mode、Discover内のAI要約などからの除外を設定できるようになる。
CMAはこの要件について、パブリッシャーに「コンテンツに関する強化されたコントロールと、より強固な交渉力を提供する」ものだと説明している。これは、これまで検索での可視性を失うリスクからGoogleの条件を受け入れざるを得なかったパブリッシャーにとって、法的に強制力のあるメカニズムが誕生したことを意味する。現在は英国のみの適用だが、EUのデジタル市場法(DMA)など他の法域が追随する前例となる可能性が高い。
2026年7月22日時点で、Googleのクローラーを完全に遮断したパブリッシャーはまだ現れていない。交渉は継続中であり、双方に合意に至る強いインセンティブがある。Redditは株価収益率(PER)が業界平均15.65に対し46.36と高く、そのバリュエーションはデータライセンス収入の将来性に対する投資家の信頼に大きく依存している。
注目の7月30日の第2四半期決算説明会では、Googleとの契約の行方に関する何らかのシグナルが発せられる可能性が高い。一方、CMAが認めたオプトアウトの仕組みの実装が進めば、より多くのパブリッシャーがこれを活用し、AI検索をデフォルトとするGoogleの戦略を試すことになるだろう。
この対立は、コンテンツ経済全体にとってのストレステストとも言える。巨大プラットフォームとパブリッシャーが、トラフィックとAI学習の両方を維持できる条件を見出せなければ、オープンウェブそのものが全く異なる基盤の上に再構築される必要が出てくるかもしれない。