欧州委は2025年6月には既に、AliExpressに対してDSA違反の予備的見解を通知していた。その際、広告とレコメンドシステムの透明性に関する一連のコミットメントは受け入れられ拘束力を持つものとなったが、核となるリスク評価の欠陥は是正されないままだった。
DSAの執行実績を振り返ると、制裁額の規模と違反の性質の両面で明確なエスカレーションが見て取れる。
| 企業 | 制裁額(ユーロ) | 日付 | 主な違反内容 |
|---|---|---|---|
| X | 1億2000万 | 2025年12月 | 透明性義務違反(ブルーチェックマーク、広告リポジトリ、研究者データアクセス) |
| Temu | 2億 | 2026年5月 | 違法・安全基準違反商品に関するリスク評価の不備 |
| AliExpress | 5億5000万 | 2026年7月 | リスク評価と違法商品対策におけるシステム上の欠陥 |
AliExpressへの制裁額はTemuの2.75倍、Xの4.58倍に上る。参考までに、DSAに基づく最大制裁額は企業の全世界年間売上高の6%である。Temuの2025年の推定売上高530億ユーロを基に計算した場合、最大制裁額は約28億ユーロであり、実際の2億ユーロはその上限を大きく下回る。
欧州委はAliExpressに対し是正措置を命令し、2026年10月20日までに特定された欠陥に対処するための行動計画を提出するよう求めた。この違反是正命令に従わない場合、継続的な定期罰金(periodic penalty payments)が科される可能性がある。欧州委は引き続きAliExpressと協議し、決定事項とDSA全般のコンプライアンス遵守を確保する方針である。具体的な是正措置の内容は公開要約では詳細に明らかにされていないが、リスク評価、商品モデレーション、違法商品対策におけるシステム上の欠陥に対処するものでなければならない。
AliExpressへの制裁は、EUが150ユーロ未満の小包に3ユーロの一律関税(従来は免税)を導入した直後に行われた——この措置は、中国越境EC大手であるAliExpress、Shein、Temuのビジネスモデルに大きな影響を与えると見られている。これらの動きは、自社マーケットプレイスで販売される違法・安全基準違反商品の取り締まりに失敗するECプラットフォームに対する、EUの大規模な規制強化の姿勢を示している。
注記:一部の検索結果で言及されているTemuに対する200万米ドルの制裁は、米国連邦取引委員会(FTC)がINFORM Consumers Actに基づいて科したものであり、本稿で扱うEUのDSA制裁とは無関係である。