米国が最も重視したのは、関税そのものではなく、EUの非関税障壁(Non-Tariff Barriers) の撤廃でした。特に、EUの厳しい自動車や食品の安全基準は、米国の中小企業にとって大きな参入障壁となっていました 。
合意文書では、EUは「米国輸出業者が直面する官僚的な手続き(レッドテープ)を撤廃するために取り組む」とされています 。しかし、具体的にどの規制を撤廃するかは明記されておらず、専門家は「単なる努力目標に過ぎない」と指摘しています
。
ターンベリー協定の批准プロセスは、アメリカの内政に引きずられる形で何度も頓挫しました。
【法的な脆弱性】オックスフォード大学の法律専門家は、この協定が法的拘束力のない政治的合意である点を指摘。正式な貿易条約ではないため、今後の履行や紛争解決において不確実性が大きいと警鐘を鳴らしています 。
米国との緊張が続く一方で、EUは中国との間にも深刻な貿易問題を抱えています。
2025~2026年の米EU貿易摩擦は、スコットランドのゴルフ場での「政治的な握手」から始まりました。米国は15%の関税上限を譲歩する代わりに、EUの工業製品関税撤廃と非関税障壁の削減を勝ち取りました。しかし、批准プロセスはグリーンランド問題によって混乱し、最終的には米国の一方的な期限によって強引に推進されました。
残る課題は山積しています。協定の法的な脆弱性、EUが求める約1500億ユーロの関税除外、そして同時進行しているEUと中国の間の、さらに規模の大きい(約3600億ユーロ)貿易不均衡問題です。EUは現在、対米・対中の両面で、より厳しい貿易政策と産業主権の確立を迫られています。