ユーロシステムのスタッフ予測によれば、2026年の平均インフレ率は3.0%を見込み、目標とする2%への回帰は2027年後半までずれ込むと見られる 。
ナーゲル氏は、追加利上げを最も声高に主張するタカ派である。6月30日のシントラでの講演では、米国とイランの停戦合意後も「エネルギー価格ショックはシステムに残っており、インフレ率は目標を大きく上回ったままだろう」と警告した 。
「中東戦争のショックがそれを必要とするなら、ECBは7月の会合で2会合連続の利上げを行う用意がある」と6月12日に発言 。また、今回のエネルギーショックは「見逃して良い短期的な供給ショックではない」と強調している 。
パネッタ氏は、より慎重な姿勢を貫く。7月15日の講演では、不透明な地政学的状況下において、ECBの政策は「インフレ期待を確実に固定するために十分に慎重でなければならない」と述べた 。
彼は景気見通しを「脆弱」と表現し、シナリオ分析に基づく政策決定を提唱 。最近のデータは「成長見通しの改善とインフレ圧力の緩和」を示しており、「ECBが7月に金利を据え置き、夏の間により多くのデータを収集するには十分な根拠となる」と論じた 。
コッヘル氏は、今後の選択肢を明確に「利上げするか、据え置くか」の二択と定義している 。7月1日の発言では、中東情勢の改善が「6月の低いインフレ率への期待」をもたらすと指摘 。
さらに、原油価格ショックによる二次的影響(賃金上昇などを通じた持続的なインフレ)は「まだ顕在化していない」と7月15日に述べ、ECBが注視している重要な点であると強調した 。彼は金利据え置きは「リスクを評価する時間を稼ぐ」と語っている 。
市場参加者の見方は、パネッタ氏とコッヘル氏の「様子見」論に傾いているようだ。7月初旬時点の市場予想では、7月の利上げ確率はわずか28%。一方、9月の利上げ確率は62%に上昇している 。
ECB自身のアカウント(議事要旨)によれば、市場は全体で約3回の利上げを織り込んでいたが、アナリストの中間値は2回と、やや慎重だった 。
ECBの金融アナリスト調査(2026年6月)によれば、中間回答者は9月の0.25%利上げを予想しており、預金ファシリティ金利は2.50%で、2027年半ばまで維持されると見ている 。
しかし、このシナリオを揺るがす最大の要因は、イラン紛争とホルムズ海峡の航行問題に連動する原油価格の動向だ。スコシアバンクは「ECBの引き締めは終わっておらず、7月または9月に次の0.25%利上げを発表するだろう。3回目の利上げリスクも存在する」と分析 。BNPパリバも、インフレリスクがやや低下したものの「9月の追加利上げシナリオを維持する」としている 。
ECB理事会は7月23日の会合前に静穏期間に入る。今後の鍵を握るデータは以下の通り:
ECB理事会の勢力図は、現時点では据え置きに傾いていると見られる。しかし、エネルギー価格が再び急騰すれば、そのバランスは瞬時に覆る可能性がある。投資家は中東情勢の一挙手一投足に注目すべきだろう。
日本はエネルギーや原材料の多くを中東に依存しており、ホルムズ海峡の情勢は日本の輸入物価や企業収益に直結する。ECBの利上げ判断は、日米欧の金融政策の連動性を考える上で重要な指標となる。ECBがタカ派姿勢を強めるほど、円安圧力が強まる可能性もあり、日本市場への影響は少なくない。