2024年、米運輸省(DOT)の自然走行研究は、自動運転システムを含む235件の安全重大事象を分析。57%に誤用が関与しており、ドライバーは運転以外の作業に従事し、高速道路以外でシステムを使い、または手をハンドルから離していた。さらに13%の事象では、自動システムがまったく反応しなかった。
2026年、AAA交通安全財団とバージニア工科大学交通研究所(VTTI)の共同研究は、注意散漫の度合いを定量化。レベル2のADAS(ACCと車線維持の両方を制御)を有効にしたドライバーは、同じシステムが利用可能だが無効だった場合と比べ、1.8倍の確率で視覚的・手動的な運転外タスク(スマホ操作など)に従事した。特にACCと車線維持(LKA)を同時使用すると、視覚・手動の注意散漫リスクは80%増加した。
2026年7月、英政府のエビデンスレビューは、ドライバーが悪天候や複雑な交通状況におけるシステムの対応能力を頻繁に過大評価し、その結果、注意と反応が低下すると結論づけた。
これらのエビデンスを受け、安全規制の最前線は「機能の有無」から「人間と機械の相互作用」へと軸足を移している。
Euro NCAP(2026~2029年ロードマップ):従来の個別ADAS性能テストに代わり、新カテゴリ「セーフドライビング」(100点満点) を導入。ここでは乗員モニタリング、ドライバーの関与(エンゲージメント)、車両支援を総合評価する。具体的には、継続的な視線・頭部追跡による注意散漫・居眠り検知を必須化。道路上での視線逸脱が1秒未満であっても警告する厳格な基準が設定された。運転監視システム(DMS)の配点は従来の2点から最大25点に大幅増加し、ステアリングセンサー間接監視では不十分で、カメラによる直接監視が事実上必須となる。
EU一般安全規則(GSR):第2段階が2026年7月7日から全新型車に適用。歩行者・自転車検知対応の高度緊急ブレーキ、車線維持支援、そして運転監視カメラ(ドライバーの頭部・眼球の動きを追跡)の搭載を義務化した。この規則は2024年7月から新型車種に先行適用されていたが、全車両への拡大で実効性が高まる。
Euro NCAPの統合的評価:2026年以降、ADASの加点はDMSの性能とドライバー受容性に連動する。単にブレーキが効くかどうかだけでなく、ドライバーが正しく監視・介入されるかが評価の鍵となる。
ADASが本来持つ事故防止効果は、決して小さくない。複数の研究は、技術を正しく活用した場合の明確な低減効果を示している。
しかし、これらの数字は「ドライバーがシステムを正しく使用・理解する」ことが前提だ。現実には誤用・不使用がまん延しており、それが規制当局を「技術そのものの性能テスト」から「人間を監視する仕組みの義務化」へと方向転換させた根本的な理由である。
ADASは画期的な安全技術だが、それは“補助”にすぎない。ドライバーがシステムを過信し、運転から注意をそらせば、その効果は半減どころか逆効果になりかねない。最新の調査と規制の動きは、自動車メーカーに対して「搭載すること」ではなく「正しく使わせる仕組み」を設計する責任を課し、ドライバーに対しては最新技術の限界を理解する努力を求めている。