International Fertilizer Association (IFA)の2026年7月中期的見通し報告書は、「2月28日以降、ホルムズ海峡の海上交通はほぼ完全に停止した」と報告。船舶自動識別システム(AIS)の追跡データによると、2月末から4月末までの間に、硫黄を積んで湾岸を離れられた船舶はわずか4隻、ウレアは2隻に過ぎませんでした。米外交問題評議会(CFR)は、この閉鎖によりタンカー交通が95%以上減少したと報告しています。
ウレア価格は2026年4月に1トンあたり850米ドルを超え、2月から80%上昇。これは2022年4月以来の最高値です。WTOの公式LinkedIn投稿(2026年5月)は、ホルムズ海峡閉鎖、ロシアの輸出停止、中国の輸出制限が複合的に作用し、ウレア価格を実質的に2倍にしたと指摘しています。世界銀行の試算では、ウレア価格の月間上昇率は46%に達し、農業価格指数を8%押し上げました。
FAOの2026年5月のアグリフード政策ハイライトは、輸出国が国内市場保護のため積極的に輸出制限を課したと報告しています。中国はウレア輸出制限を2026年8月まで延長し、硫酸に70万トンの輸出枠を導入。ロシアも肥料輸出枠を延長しました。Global Trade Alert (GTA)の2026年3月月次報告書は、「ホルムズ危機を受けたエネルギー・肥料輸出制限」を主要トレンドとして明示しています。こうした措置により、世界の肥料貿易の最大30%が影響を受けました。
ブラジルは世界最大の農産物輸出国である一方、肥料の80%以上を輸入に依存しています。同国は窒素需要の約40%を湾岸諸国からのウレアに依存しており、ホルムズ海峡閉鎖の影響を最も受ける国の一つです。
ブラジル農業省は、2026/27年の作付けシーズンについて、肥料供給状況を**「極めて高いリスク」** と分類。最悪のシナリオでは、リン酸肥料が国内需要の最大20%不足し、農産物価格の上昇を招く可能性があると推定しています。同国農業省の試算では、2026年に100万~300万トンのリン酸肥料が不足する可能性があります。
世界の農業大手はすでに穀物生産への影響を懸念。ブラジルの大豆・トウモロコシの収量が、肥料不足により低下するリスクが指摘されています。
世界銀行は2026年5月のGlobal Markets Outlookで、「中東紛争が食料安全保障へのリスクを高めている」と警告。ウレア価格の高騰が食料価格の高騰(affordability crisis)リスクを生んでいると分析しました。FAOの事務局長は、ホルムズ海峡の混乱が「2026年後半から2027年にかけて収量減少と食料供給の逼迫を引き起こす」と警告。特に食料純輸入途上国への影響を深刻視しています。
分析では、国際的な肥料の戦略的備蓄制度が存在しないことが問題を一層深刻化させていると指摘されています。原油や穀物には戦略備蓄がある一方、肥料には同様の防衛策がなく、市場は今回の規模の混乱に対して「準備ができていなかった」とIFPRI(国際食料政策研究所)の分析は指摘しています。
2026年6月の暫定合意後、一部の船舶はホルムズ海峡を通過し始めましたが、肥料取引の正常化は依然として不透明です。AMIS(農業市場情報システム)の2026年7月市場モニターは「肥料市場には緩和の兆しがある」と報告する一方、IFAは「最悪のシナリオでは正常化は2028年までずれ込む可能性がある」と分析しています。