台湾のドローン輸出は爆発的に拡大している。2025年の完成機輸出は前年比21倍の29.5億台湾ドル(約9350万ドル)に達した。さらに2026年第1四半期(1~3月)の輸出額は1億1585万ドルに上り、早くも2025年の通年実績を超えた。これまで最大の輸出先はチェコ、ポーランド、米国で、ウクライナ戦争に伴う欧州需要が主な原動力だった。今回のサウジアラビアからの大型受注は、輸出先が欧州以外にも多様化し始めたことを示す重要なシグナルだ。
台湾のドローンの最大の競争力は、中国製部品を一切使用しないサプライチェーンにある。価格は同等の中国製の約2倍だが、ウクライナや欧州諸国、米国などのバイヤーは、サイバーセキュリティやサプライチェーンのリスクを排除する代わりにプレミアムを支払う用意がある。政府は「非レッド」サプライチェーンを基盤とするアジア太平洋のドローン拠点を目指し、5年間で442億台湾ドル(約13.8億ドル)を投じる計画を立て、その後、このコミットメントを推定18億ドルに拡大した。経済部(MOEA)は2026年5月、デトロイトで開催された国際ドローン展示会「XPONENTIAL 2026」に20社以上の台湾企業を派遣し、「非レッド」サプライチェーン・ソリューションを売り込んだ。
サウジアラビアからの受注は、台湾ドローンにとって中東地域における最初の大口取引となる。これは、湾岸諸国が中国製ドローン(DJIなど)に代わる調達先を模索し始めたことを示唆しており、欧州の需要を牽引したのと同じ安全保障・サプライチェーン上の懸念が背景にある。ブルームバーグはこの取引を、台湾の「新興ドローン産業が世界的に買い手を引きつける存在になりつつある」証拠だと報じている。
しかし、台湾のドローン産業が勢いづく一方で、国内政治は深刻な混乱状態にある。
台北タイムズ(Taipei Times)の社説は、こうした動きについて、輸出競争力と国防の両方にとって極めて重要な時期に、国民党が「台湾のドローン推進を弱体化させている」と批判している。
サウジアラビアとの大型契約は、台湾ドローン産業の核心にあるパラドックスを浮き彫りにしている。すなわち、中国製不使用ドローンを求める世界的な記録的輸出需要と、生産拡大に不可欠な政府投資を妨げる国内政治の膠着状態という矛盾だ。2025年の産業生産高は129億台湾ドル(前年比2.5倍)に達し、2026年第1四半期の輸出急増は力強い商業的勢いを示している。しかし、研究開発と生産能力拡大のための確固たる資金枠組みが整わなければ、台湾は「非レッド」サプライチェーンにおける先発優位性を競合に奪われるリスクを抱えている。