米国とイランは2026年6月14~15日に暫定停戦合意に署名し、イラン戦争中に事実上閉鎖されていたホルムズ海峡が再開された 。これにより、湾岸地域に滞留していた大量の石油輸出が一気に動き出した。IEAによれば、UAEはペルシャ湾岸諸国の中で最も迅速に対応し、海峡再開とともに生産を急速に増やした
。
結果として、UAEの原油輸出は記録的な急増を見せた。Kpler、Vortexa、LSEGの船舶追跡データによれば、5月から6月にかけて日量100万バレル以上増加し、日量370万~380万バレルの過去最高を記録した 。Kplerの推定では、6月の輸出量は日量415万9千バレルに達したとするデータもある
。
UAEが海峡再開後、短期間で日量410万バレルを生産できるようになったことは、業界アナリストにとって驚きではなかった。2026年4月の時点で、ゴールドマン・サックスはUAEが2026年末までに日量450万バレル強を生産できる可能性があると推定し、OPEC離脱は「中期的な石油供給の上振れリスク」を高めると指摘していた 。今回の記録は、その予測を早期に裏付けるものとなった。
UAEのOPEC離脱後の行動の一つ一つが、同じ戦略的な絵図を描き出している。すなわち、アブダビはOPEC時代の規律ある価格支持から決別し、量の拡大を優先しているのだ。
UAEはOPEC離脱から数週間で、イラン戦争前の約日量330万バレルから6月には日量410万バレルへと生産量を増やした 。IEAはこの成長が続き、総石油生産量は2027年に日量500万バレルを超え、2027年までに日量520万バレルに達すると予測している
。これは一時的な急増ではなく、OPECの価格支持枠組みからの意図的な決別である。
停戦によりUAEの輸出ルートが解放されたタイミングは、アブダビがOPECの生産枠から解放されたまさにその時だった。このタイミングが極めて重要であり、月間で日量100万バレルを超える記録的な輸出増加は、世界的な石油需要の弱体化が広く予想されるタイミングで市場に供給を投げ込むことになった 。
2026年5月3日、OPEC離脱からわずか2日後、ADNOCは2026~2028年に向け、上流・下流事業にわたる2000億UAEディルハム(550億米ドル)のプロジェクト受注を発表した 。これは長期的な生産能力増強計画であり、価格環境がどうであれ、UAEが今後何年にもわたって大量に生産・販売する意思がある場合にのみ意味を持つ。この受注は、ADNOCが既に承認済みの1500億ドルの5年間設備投資計画をさらに強化するものだ
。
ゴールドマン・サックスがUAEの離脱は「中期的な石油供給の上振れリスク」を高めると評価したのは、不況時でも生産を続ける意思を示したからに他ならない 。より広い文脈は明白である。UAEは広く予想される需要減退環境に直面して、生産を拡大しているのだ。
UAEの6月の記録的な生産量は、世界の石油政治における根本的な再編を示している。59年にわたり、UAEはOPECの中で最も規律ある加盟国の一つとして、生産制限を受け入れる代わりに価格安定を享受してきた。その時代は2026年5月1日に終わった。
アブダビは今、価格よりも市場シェアを優先する戦略を追求している。これはサウジアラビアや他のOPEC加盟国、そして世界の石油価格に大きな影響を与える選択だ。IEAが2027年までに日量520万バレルと予測するように、これは一時的な調整ではなく、石油供給の地理的構造における恒久的なシフトである。
2026年6月の記録は、そのシフトのスナップショットである。カルテルを離脱し、輸出ルートを確保し、余剰能力を投入し、将来の成長に数十億ドルを投資する。その一方で、国際的な需要予測は下方を指している。この戦略が成功するかどうかは、アブダビが縮小する市場のより大きなシェアを確保するために、どれだけ低い価格を受け入れ続けることができるかにかかっている。
重要なポイント: UAEの記録的な生産量は、OPEC離脱、ホルムズ海峡の再開、そして既存の余剰生産能力によって可能となった。550億ドルのADNOC投資パイプラインは将来の成長を確実なものにする。この戦略は、59年にわたるUAEの規律あるOPEC加盟国としての役割からの根本的な決別を示し、世界の石油市場における量を重視した競争の新時代を告げるものである。