とはいえ、市場の一部はさらに高い水準を期待していた。ブルームバーグによれば、Q1の売上高はアナリストコンセンサス(3035億元)を下回っており、AI需要が極めて強いとはいえ、市場が織り込むほどの生産能力の立ち上げには至っていないとの見方もある 。
爆発的なAIサーバー需要が成長の単一エンジンだ。FIIは「AIインフラ需要の継続的な拡大」、特にクラウドサービス事業者向けのAIサーバーとデータセンター機器が収益を押し上げたと説明している 。同社はNVIDIAの最大のサーバー受託メーカーであり、Amazon、Microsoft、Google、Metaといったハイパースケーラー主導のAI投資サイクルに直接乗っている格好だ
。
親会社の鴻海精密(フォックスコン)自体も記録的な業績を達成している。Q1(2026年1~3月)の売上高は2.12兆台湾元(約66億米ドル)で前年同期比29.7%増、純利益は499億台湾元(同19%増)とアナリスト予想を上回った 。営業利益は63%の大幅増で、AIサーバー構成の高付加価値化が反映されている
。
AI特需で業績が絶好調の中にあっても、鴻海精密は一貫して慎重な姿勢を崩していない。Q2売上高の発表では、市場予想を上回る数字を並べながらも、「不安定な世界政治情勢(volatile global politics)」への警告を明記した 。Q1の売上高発表でも、30%近い増収を報告する一方で同様の地政学リスクを指摘している
。
この警戒感の背景には、米中対立の激化、潜在的な貿易規制、サプライチェーンの再編といった現実がある。台湾に本社を置く鴻海精密の劉揚偉(ヤング・リュウ)会長は以前、「AI市場には非常に楽観的だが、地政学や為替の問題には常に警戒が必要だ」と述べている 。
FIIの利益倍増は確かに驚異的だが、その構図は決して単純ではない。巨大テック企業によるAIインフラ投資の持続可能性に、市場は次第に神経質になっている。一部のアナリストが「薄利多売の超拡大(hyper-scale growth on razor-thin margins)」と呼ぶ構造を疑問視する声もあり、半導体セクター全体が調整圧力にさらされている 。
当面、AIサーバーの建設ラッシュは加速を続け、FIIはその成長を捉える絶好のポジションにある。しかし、地政学リスクと市場の不確実性は確かに存在し、鴻海精密は投資家にそのことを忘れさせないようにしている。