サンプルリターンカプセルを地球へ切り離した後、母機は地球スイングバイを利用して、メインベルト彗星311P/PanSTARRS(P/2013 P5)へ向かう。この彗星は小惑星帯にある活動的な塵放出天体で、2034~2035年に到着し、周回軌道からフライバイ観測を行う。このように、天問2号は単一の探査機で小惑星サンプルリターンと彗星探査の両方を達成する、世界初のミッションとなる。
天問2号が解明すべき最も重要な問いの一つが、「カモオアレワはどこから来たのか」だ。現在、二つの仮説が対立している。
複数の査読付き論文(『Nature Communications』『Communications Earth & Environment』など)は、カモオアレワの反射スペクトルが、宇宙風化を受けた月のケイ酸塩鉱物とほぼ完璧に一致し、典型的な小惑星帯の天体とは異なることを示している。その赤みがかったスペクトル、地球に似た軌道、地球-月系への近さから、これは月の破片である可能性が非常に高い。約2800万年前に月に衝突した天体が、コペルニクスやジョルダーノ・ブルーノなどのクレーターから破片を弾き飛ばし、それが地球の1:1共鳴軌道に捕獲されたと考えられている
。カモオアレワは、地球の準衛星として知られるわずか数個の天体の一つでもある
。
2026年6月に『Nature Communications』に発表された新しい研究が、月起源説に異議を唱えた。この研究は、カモオアレワのスペクトル特性は、フローラ族を含む内側メインベルトのS型小惑星とも矛盾せず、現在の軌道だけでは月起源を決定的に証明できないと主張する。同研究は、高速自転と小さいサイズが宇宙風化による同様のスペクトル赤化を引き起こす可能性があると指摘している
。
結論: 月起源説は依然として有力だが、議論は活発である。天問2号が持ち帰るサンプルは、同位体比、鉱物組成、希ガスシグネチャーを既知の月試料と比較することで、この論争に決定的な決着をつけると期待されている。
天問2号の戦略的重要性は、以下の点に集約される。