このフライバイでJAXAが特に重視したのは、次の4つの技術実証です。
探査機が小惑星に衝突することなく、極めて近い距離を高速で通過するための自律的な軌道制御技術。これは将来、地球に衝突する可能性のある天体に対し、探査機を正確に衝突させたり( kinetic impactor)、あるいは詳細観測のために接近させるための基盤技術です。
トリフネのような小さく、高速で移動し、事前の観測情報が限られる天体に対し、接近直前のわずかな観測情報だけを頼りに正確なコースを維持する技術が実証されました。
搭載カメラと分光計を用い、最接近の一瞬のうちに表面のテクスチャ、温度、鉱物組成、形状データを取得。このデータは、実際に衝突回避を行う前に「衝突する天体」の性質を迅速に把握するために極めて重要です。
「はやぶさ2」は元々、小惑星リュウグウにゆっくりとランデブーするよう設計されていました。今回、その設計思想を根本的に変え、高速フライバイというまったく異なる運用プロファイルに適合できることを実証しました。
「はやぶさ2」は2020年に**初号機(プライマリミッション)を完了し、小惑星リュウグウのサンプルを地球に帰還させました。サンプルカプセル切り離し後も探査機本体は健在で、「はやぶさ2#(Hayabusa2#)」**と名を変え、新たなミッションに挑んでいます。
| フェーズ | 時期 | イベント |
|---|---|---|
| プライマリミッション | 2014~2020年 | リュウグウへの到達・サンプル採取・帰還 |
| 巡航フェーズ | 2020~2026年 | 深宇宙航行、系外惑星・黄道光観測 |
| トリフネフライバイ | 2026年7月5日 | 超接近フライバイ&惑星防衛技術実証 |
| 第1回地球スイングバイ | 2027年 | 軌道制御のための重力アシスト |
| 第2回地球スイングバイ | 2028年 | 軌道制御のための重力アシスト |
| 最終目標 | 2031年 | 高速自転小惑星1998 KY26へのランデブー |
トリフネフライバイはあくまで1998 KY26へ向かう途上の通過点でしたが、JAXAはこれを単なる「ついでの観測」に留めず、あえてリスクを取った惑星防衛技術の実証の場として活用しました。
このミッションの成功により、日本は世界の惑星防衛分野において、**米国と並ぶ「第二の柱」**としての地位を確立しました。