しかし、独立系の船舶追跡データは、より慎重な回復を示している。CNBCが6月24日に報じたKpler社のデータは、確認された原油輸送量を日量約480万バレルと推定。これは2月28日の戦闘開始以来の最高値ではあるが、戦前の基準である日量約1500〜2000万バレルには大きく及ばない。ゴールドマン・サックスは、湾岸諸国からの輸出は戦前の約70%までしか回復しないと予測した
。モルガン・スタンレーは6月初旬時点で、湾岸産原油の日量約1100万バレルがなお供給から外れていると試算している
。
米政府の公式数字と独立系追跡機関の数字に乖離があるのは、ヴァンス副大統領の数字が継続的な日量ではなく、ペルシャ湾に滞留していた3500万バレルものタンカーの「一掃」による断続的な急増分を含んでいる可能性が高いためだ、とCNBCは指摘している。米エネルギー情報局(EIA)は、完全な回復は2027年初頭まで期待できないと述べている
。
覚書は、最終合意のための交渉期間と合わせて、商用船が60日間無料で海峡を通行できる期間を設けた。イランの最高国家安全保障会議は6月18日、「今後60日間、ホルムズ海峡通過を申請する船舶には一切の費用を課さない。全ての費用はイラン政府が負担する」と発表した
。
しかしイランは、これが一時的措置であることを明確にしている。イラン国営ファルス通信は6月15日、この合意には「米国が初めて、イランの海事サービス料徴収権を認めた」内容が含まれていると主張。モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ国会議長(イラン側の戦後交渉責任者)は、無料通行は「60日間のみ認められている」とし、その後はオマーンと協力して「保安、航行、環境、保険サービス」の費用を徴収すると明言した
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一方、米国の立場は、ホルムズ海峡は国連海洋法条約(UNCLOS)および慣習国際法上の国際海峡であり、イランに課金の法的根拠はない、というものだ。この課金をめぐる争点は、進行中の協議(スイスでの間接協議)の中心課題になるとみられる。
イラン産原油のホルムズ経由輸出は、6月22日までに戦闘開始以来の最高水準に急増。米国の制裁対象となっている3隻の超大型タンカー(Elva、Virgo、Vigor)が約600万バレルを輸送した。IEAは「米国の封鎖が解除されれば、イランの原油輸出は完全に再開できる」と指摘していた
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7月初旬、イランは20%のプレミアムで原油を販売しており、合意以降に4000万バレルを輸出したと主張している。一部で報じられた「5000万バレル輸出、約35億ドルの歳入」という数字は、今回の精査に利用した信頼できる一次ソースでは直接確認できなかった。
60日間の期限に合わせて、間接協議が進行中だ。ヴァンス副大統領は6月下旬、和平協議のためにスイスに飛んだ。覚書では、両国は2ヶ月以内に「最終合意」を交渉し、国連が拘束力のある決議を支持することになっている
。60日間の無料通行期間は6月中旬から始まったため、その期限は8月中旬頃となる。
ホルムズ海峡の原油輸送回復が明らかにしたのは、関係が「解決」されたのではなく、脆弱で「取引的」な停戦が成立したに過ぎないという現実だ。双方とも60日間の猶予期間をてこに自らの立場を最大化しようとしている。米国は「封鎖は打破され、イランの脅威は無力化された」と主張する一方、イランは「自由航行は一時的であり、今後はこの要衝を収益源とする」とシグナルを送っている。
8月中旬の期限までに、核制限、制裁救済、そして海峡の管理方法を包括する恒久合意が成立するか否かが、このデタントが維持されるか、再び対立に逆戻りするかの分水嶺となる。