サーフ氏は1970年代、ロバート・カーン(Robert Kahn)氏とともに、異なるコンピューターネットワーク同士が相互に通信できるようにするTCP/IPプロトコルを開発。このプロトコルが現在のインターネットの基盤となった。Googleでは、技術理念の伝道者として標準策定やオープンインターネットの推進に尽力した
。
サーフ氏は退任にあたり、**自律型AIエージェント(AI Agent)**の台頭がもたらす課題に焦点を当てた。彼は、「複数のソースから生まれる多数のAIエージェントが互いに相互作用するエージェンティックモデルは、必然的に相互運用性と標準化、構成(コンポジション)を強制する」と述べた。
さらにサーフ氏は、この問題は1970年代にTCP/IPが解決したのと同じ構造的な課題だと指摘。AIエージェント向けの標準化された通信プロトコルがなければ、多様な主体が開発するエージェント同士が「断片化」し、カオスに陥るリスクを警告した。
この警告は業界の動きと完全に一致している。Googleは2025年4月にエージェント間プロトコル**A2A(Agent-to-Agent Protocol)を、Anthropicは2024年11月にMCP(Model Context Protocol)を、IBMは2025年4月にACP(Agent Communication Protocol)**をそれぞれ公開しており、業界全体が標準化に向けた競争を始めている。IETF(インターネット技術特別調査委員会)内でも、AIエージェントのためのネットワーク層インフラの議論が急速に進んでいる。
サーフ氏はロサンゼルス校(UCLA)の大学院生としてARPANET(インターネットの前身)の初期設計に携わり、国防高等研究計画局(DARPA)でプログラムマネージャー、MCIで商用メールシステムを開発した後、2005年にGoogleに移籍した。ICANN(アイキャン)の初代会長も務めた。
「オープンなインターネット」を支えた技術者が退任することで、**「オープンプロトコル」**を中核とする一章が終わり、AIエージェント時代の新たな標準化競争という次の章が始まろうとしている。