これらの磁石は、合肥にある国家大型科学インフラ「CRAFT(聚変堆主机关键系统综合研究施設)」(別名「夸父(Kuafu)」施設)の最重要部品である。CRAFTは次世代核融合炉の基幹システムの試作・試験を行うプラットフォームで、今回の成果はその中核を成す。
今回発表の目玉は、体積で世界最大となる核融合炉用超伝導トロイダル磁場コイルである。
同日、高温超伝導中心ソレノイドコイルも全条件試験に成功し、国際的にトップレベルの性能を示した。
両磁石は、超伝導線材の製造からコイル巻線、熱処理、組立、試験に至る全サプライチェーンにおいて、100%国産化を達成した。国営メディアは「完全な国産化(100%本地化)」と表現し、中国の核融合計画が重要な部品で外国サプライヤーに依存しない体制を確立したと伝えている。
CRAFT施設で最近達成されたマイルストーンは以下の通り。
今回の磁石のマイルストーンは単独の成果ではない。中国の多段階戦略の中に位置づけられ、同国を世界の核融合レースにおける有力な競合者に押し上げている。
| 段階 | 装置 | 主な状況 |
|---|---|---|
| 現在実験中 | EAST(「人工太陽」) | 2025年1月に1億℃超のHモードプラズマを1066秒維持。2026年には密度限界の壁を突破。 |
| 次段階(燃焼プラズマ) | BEST(燃焼プラズマ実験超伝導トカマク) | 2023年建設開始。2026年6月に極低温容器ベースの設置工事中。2027年末までに初プラズマとQ>1の核融合着火を目標。 |
| 炉工学実証 | CFETR(中国核融合工学試験炉) | 設計段階。今回のTF・CS磁石はCFETRの技術を直接検証するもの。 |
| 実証炉 | CFEDR(中国核融合工学実証炉) | 長期的目標。核融合による商用発電。 |
重要なポイント: 今回試験に成功したTF・CS磁石は、機能的にはCFETRのプロトタイプである。しかしその直接の目的は、2027年までに世界初の持続的燃焼プラズマ(Q>1)を達成するBEST炉の実現リスクを低減することにある。
EASTが2025年1月に達成した1億℃超での1066秒間のHモードプラズマパルスや、2026年の密度限界突破といった近年の記録は、中国がプラズマ制御において高度な運用成熟度を持つことを示している。CRAFTの磁石は、中国がBESTやCFETRを建設するために必要な産業規模の国産製造能力をすでに備えていることを証明した。
OUCI科学データベースに掲載された分析によれば、中国のEASTからITERへの協力、そしてCFEDRへと進む体系的な多段階戦略は、低・高温両方の超伝導体を用いた高電流密度CICC導体の開発など、核融合磁石技術に革新的な進歩をもたらしている。
英エコノミスト誌は2026年3月、中国を「核融合エネルギーレースの有力な競争相手」と評し、合肥で急速に建設が進むBESTをその決意の証として挙げている。今回の世界最高レベルの磁石の完成は、その評価に具体的な工学的証明を加えるものだ。
CRAFT磁石の検証が完了したことで、焦点はBESTに移る。同装置は合肥総合国家科学センターで最終組み立て段階に入っており、2026年半ばまでにメイン建屋は完成し、コンポーネントの事前組み立てが進行中である。超伝導磁石を-269℃に保つ巨大な真空断熱容器である極低温容器ベースは2026年6月に設置された。
BESTが計画通り2027年末までに初プラズマを達成すれば、核融合装置として初めて持続的な燃焼プラズマと純エネルギー利得を実証することになり、ITER(2030年代の初プラズマを目標)や、Commonwealth Fusion Systems社のSPARC(2027年目標)などの国際的な競合に対して先行することになる。