グーグルの屋台骨である検索広告は、リンクや広告を表示せずに直接回答を返す会話型AIに直接脅かされる。2000億ドルを超える広告事業を抱えるグーグルには、自らの収益を共食いするインセンティブがほとんどなかった。一方、OpenAIはそのような守るべき既存事業がないため、制約なく動くことができた。
複数の報道によれば、グーグルでは意思決定の遅さ、チームの断片化、縄張り争いが常態化していた。2026年4月時点でも、社内の政治的な摩擦のためにAIコーディングツールを統一ブランドにまとめる作業に苦戦していた。スタートアップがスピードを定義する一方、グーグルは何層もの承認プロセスをくぐり抜けなければならなかった
。
DeepMindとGoogle BrainはTransformer、AlphaFold、BERTといった世界最先端の研究を生み出した。しかしグーグルはこれらのブレークスルーを、消費者向けのチャットボットやAPIとして製品化するタイミングを逃した。OpenAIがインターフェースを定義し、Microsoftが流通を定義し、スタートアップがスピードを定義した。
2025年末から2026年にかけて、状況は変わり始めた。多くのアナリストは、Geminiモデル、1800億ドルを超えるAIインフラへの積極投資、そしてウォール街の信頼回復により、グーグルは追いついたどころか、むしろリードを奪い返したと主張する。
2026年の設備投資計画は1750億~1850億ドルと、2025年の914億ドルから約2倍に増加し、その大半はAIコンピューティングインフラに充てられる。新たな汎用モデル「Gemini 3」は、推論能力とコーディング能力で高い評価を得た
。
「後れを取っている」という評価は、もはやAI全体というよりも、特定のサブセグメントに当てはまるのかもしれない。例えばAIコーディングツールの分野では、グーグルはAnthropicなどの競合に今も苦戦しており、顧客需要が急増する中でも社内政治が進展の妨げになっている。
グーグルのAIをめぐる物語は、慎重さと社内の摩擦によって機会を逃した「第1章」と、積極的な再投資に転じた「第2章」の二部構成と言える。同社が本当の意味で復活を持続できるかどうかは、そもそもつまずきの原因となった組織的・戦略的な課題を根本的に解決できたかどうかにかかっている。