中古EV市場にも波及効果が見られる。「現在、中古市場では電気自動車ブームが起きている」と、北欧EV市場を分析するアナリスト、テリエ・ダールグレン氏は、2026年2月のイラン紛争による石油供給途絶で生じたガソリン価格高騰をその理由に挙げている。
2025年5月、BEV(純電気自動車)の市場シェアは西欧で約17%(EU単体では約15.4%)に達し、登録台数は約19万3500台と前年同月比27%増となった。国際クリーン交通評議会(ICCT)の別の試算では、欧州全体のBEV平均シェアは2025年5月時点で16%だった
。プラグイン車全体(BEV+PHEV)のシェアは、全市場の約25%に達した
。
国別では、ノルウェーが引き続きEV普及を牽引し、2025年5月の新車登録に占めるBEVの割合は前年の93.9%から97.8%に上昇した。スウェーデンでもEVシェアは前年比13ポイント増の41%に達した
。
今回の急増により、競争環境は大きく変化した。フォルクスワーゲン・グループは2025年、テスラの2年にわたる王座を奪い、欧州EV販売トップに立った。フォルクスワーゲンブランドのBEV販売台数は前年比56%増となり、新型「ID.7」が好調に寄与した
。JATOダイナミクスによると、フォルクスワーゲンは欧州で27万4278台のBEVを登録したのに対し、テスラは23万6357台にとどまった
。
一方、テスラは欧州での登録台数が2025年に27%減少し、競争激化に直面している。5月単月では前年同月比で31%の落ち込みとなった
。EU市場におけるテスラのシェアは、2025年の最初の5ヶ月間で前年の2%から1.1%に低下した
。
PHEV(プラグインハイブリッド車)はBEVを上回る勢いで成長し、5月の前年同月比は46%増となり、特にPHEVのラインナップが充実している自動車メーカーを後押しした。このPHEV急増の背景には、ドイツ(52.8%増)とスペイン(66.6%増)の需要が大きく寄与している
。
目を見張るような数字にもかかわらず、業界幹部やアナリストはこの成長が持続可能ではない可能性を警告している。最大の懸念は、燃料価格への依存度の高さだ。イラン紛争が沈静化しガソリン代が下落すれば、消費者のEVへの関心は急速に薄れる可能性がある。
フォルクスワーゲン・グループ傘下のセアトおよびクプラのCEO、マルクス・ハウプト氏はロイター通信に対し、「われわれは明らかに危機に動かされたシフトを目の当たりにしている」と述べ、ガソリン価格が下がれば熱意は冷めるかもしれないと警告した。
その他の構造的なリスクとしては、以下の点が挙げられる。
通年で見ると、2025年は欧州EV販売にとって力強い年となった。BEVの登録台数は2024年比で約31%増加し、欧州全体の年間市場シェアは過去最高の19%に達した。EUのより厳格な自動車CO2排出基準や、中国系自動車メーカーによる低価格モデルの投入なども後押しした
。2025年末までに、世界で販売される新車の4台に1台がEVとなり、欧州は主要市場の中でも特に強い成長を示した
。
しかし、5月の急増は脆弱性を浮き彫りにしている。需要の伸びが、インフラ整備や価格低下といった構造的な変化ではなく、短期的な燃料価格の高騰によってもたらされている場合、その反動は急速に現れる可能性がある。米国とイランの間ではすでに停戦合意が成立しているが、ホルムズ海峡での航行障害により石油の流通が正常化するには数週間を要する可能性がある。EVブームが、その引き金となった地政学的な不安定性を乗り越えて持続するかどうかは、依然として不透明である。
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