連邦裁判所も既に判断を示し始めている。 2026年2月、テネシー州中部地区連邦地方裁判所はKalshiの予備的差止命令の申し立てを認め、同社のスポーツイベント契約が商品取引所法上の「スワップ」に該当する可能性が高く、連邦法がテネシー州の規制努力に優先する可能性が高いとの見解を示した 。この判決は、急速に拡大する判例に重要な一例を付け加えるものだ。
州レベルでの反発は依然として激しい。 少なくとも11州がスポーツイベント契約を標的とした営業停止命令を発出。ネバダ州はKalshiとPolymarketの両社の営業を差し止める裁判所命令を勝ち取った。アリゾナ州はKalshiを違法ギャンブルで20件の刑事告訴。現在、この分類問題をめぐり20件以上の連邦訴訟が係争中だ 。
議会も圧力を強めている。 有力な上院議員が産業の将来を著しく制限する可能性のある法案を提出した 。2026年4月、下院民主党の連合はCFTCに対し、インサイダー取引の禁止と、正当な経済的ヘッジ目的のない選挙、軍事行動、スポーツ、政府決定に関するイベント契約の禁止を要請した
。下院監視委員会は5月、Kalshiに書簡を送り、海外サイト迂回への対策状況に関する記録の提出を要求した
。
ブラジルの取り締まりは最も広範囲に及ぶ。 2026年4月24日、財務省は通信規制当局アナテルを通じて、PolymarketやKalshiを含む27の予測プラットフォームを遮断した 。ドゥリゴン財務大臣は、これらのプラットフォームが議会で承認された賭博規制に違反し、国内で事業を行う法的根拠を一切欠いていると述べた
。政府は、これらのプラットフォームが連邦ライセンスなしで運営されており、違法な賭博事業として扱われることを国民に警告する啓発キャンペーンを開始した
。
日本は異なるアプローチを示す。 ポリマーケットは、2030年までの日本市場参入に向け、正式な政府認可を追求している。他市場のように先行してローンチし後から規制当局と対応するのではなく、現地に代表者を任命し、公式ルートを通じて許認可を目指すという、異例の慎重な長期戦略をとっている 。日本は主要経済国の中でも最も厳格な賭博法を持つ国の一つであり、この慎重な戦略を際立った例外としている。
伝統的なギャンブル業界は、予測市場を州規制下のスポーツベッティングに対する存亡の危機と見なし、攻勢を強めている。
米国ゲーミング協会(AGA)とインディアン・ゲーミング協会(IGA)は、2026年1月に連名で議会に書簡を送り、予測市場を「危険で、並行して存在する、非課税の賭博市場」と呼び、対策を要求した 。AGAは、これらプラットフォームが政府から潜在的なスポーツベッティング税収として5億ドル以上の機会損失をもたらしたと推定している
。
業界の警戒感は広範囲に及ぶ。 2026年第1四半期のAGA調査では、ゲーミング企業の幹部の81%が、予測市場を規制されたゲーミング業界に対する「極めて重大な脅威」として挙げている 。この数字は、自らの規制上・税制上の優位性が組織的に損なわれていると見るセクターの危機感を反映している。
労働組合も反対に加わった。 10万人以上のカジノ従業員を代表するUNITE HEREは、スポーツイベント契約の完全な排除を要求している 。2026年6月には、ゲーミング業界、部族、労働組合が共同で、係争中の暗号資産法案に、予測市場によるスポーツ賭博の提供を禁じる文言を追加するよう議員に求めた
。
この戦いは業界自体をも分裂させた。 DraftKings、FanDuel、Fanatics、bet365は6カ月の間にAGAを脱退。予測市場への対応方法をめぐる内部対立が一因で、これらの事業者の一部は現在、独自の予測市場商品を立ち上げている 。
予測市場を規律する国際条約、モデル法、多国間協定は存在しない。各国は、しばしば全く異なる目的のために設計された既存の法律を拡大解釈するなど、その場しのぎの対応をしている。
KPMGの分析は、米国の道筋を「裁判の行方を見守りつつ、規制緩和へ進む」と表現しているが、それは「確立された政策ではない」 。CFTCは、農産物や金融デリバティブ向けに設計された枠組みを、スポーツベッティングとそっくりに機能し、そのようにペイアウトされる商品に適用しているのだ
。その他ほとんどの国は、予測市場を既存の賭博法の下での違法ギャンブルとして扱っているのみで、この目的のために特別に制定された法律を持つ管轄区域は存在しない
。
あらゆる訴訟、禁止措置、ロビー活動キャンペーンの核心には、実際上の重大な結果を伴う、たった一つの分類問題がある。
デリバティブ論では、予測契約は商品取引所法に基づき規制される先物・商品取引所であり、天候デリバティブや経済指標と同様に、現実世界のイベントに関する価格発見機能を提供すると主張する 。この枠組みの下では、CFTCが排他的な管轄権を保持する。
ギャンブル論では、スポーツイベント契約はスポーツベッティングと機能的に同一だが、州税、年齢確認、責任あるゲーミングのルール、消費者保護なしで運営されていると主張する 。この見解が優勢となれば、プラットフォームは州ごとのライセンス制度に従うか、ギャンブルを禁止する州では全面的な禁止に直面しなければならない。
実際上の利害は極めて大きい。トランプ政権による州法に優先するための訴訟は、全国的なデリバティブ分類を固定化することを明確に狙っている 。その結果次第で、予測市場が連邦規制下の全国市場として運営できるか、あるいは50の異なる州の規制制度をくぐり抜けなければならないかが決まる。
2026年ワールドカップは、法廷、議会、そして国際的な規制当局が追いつこうと奔走する中、数十億ドルが規制の空白地帯を流れ続けるという、この未解決の問いを鮮明に浮かび上がらせている。