公開価格135ドルでスタートした際の想定時価総額は約1.77兆ドル(約270兆円)だった 。取引初日、寄り付きは150ドルと即座に11%の上昇を記録
。初日の売買高は5億株を超え、年間の他IPOを圧倒する活況ぶりだった
。
一時176.52ドルまで急伸した後、終値は160.95ドルで着地し、初日の上昇率は19%。時価総額は約**2.1兆ドル(約320兆円)**となり、一瞬にして全米第6位の企業規模に躍り出た 。翌週月曜日にはさらに31ドル近く上昇し、終値は192ドル近辺に達した
。創業者イーロン・マスク氏は、これにより世界初の保有資産1兆ドル超えとなる「世界初の兆万長者」となった
。
今回のIPOで最も衝撃的だったのは、資金調達の規模だけではない。スペースXは銀行団との手数料交渉で、歴史的にも稀な勝利を収めている。
「手数料ゼロのグリーンシュー」は前代未聞の取り決めであり、世界で最も注目されるIPO案件を巡る銀行間の過熱した競争と、スペースX側のけた外れの交渉力を物語っている。
個人投資家への割り当て比率は、IPO前の数週間、最も注目された争点の一つだった。マスク氏はX(旧ツイッター)上で、発行体積の最大**30%**を個人に割り当てる可能性を示唆。これは通常5~10%と言われる大型IPOの個人比率の約3倍にあたり、日本のIPO市場のように個人に手厚いわけではない米国市場では極めて異例の発表だった 。
スペースXはこの巨額資金の主要な使途として、野心的な新分野への投資を掲げている。それが軌道上AIデータセンターの建設である。
大型再使用ロケット「スターシップ」の輸送力と、自社の衛星インターネット網「スターリンク」の通信基盤を組み合わせることで、宇宙空間に人工知能(AI)の計算リソースを配備する計画だ。これは、地上の電力制約や冷却問題から物理的に解放された、全く新しいコンピューティング・インフラの構築を意味する 。
上場直後から、ウォール街のアナリストの間では異例の速さで評価が真っ二つに割れた。
上場前の6月10日、ニューストリート・リサーチのピエール・フェラグー氏は「オーバーウェイト」評価で目標株価165ドルのカバレッジを開始。これは公開価格から22%の上昇余地を示し、買収先のカーソル社を含めた企業価値を約2.3兆ドルと評価するものだ。
その根拠は、2030年までに売上高1,950億ドル、EBIT(利払前・税引前利益)650億ドルという大胆な業績予測。フェラグー氏は、スターリンクとAI事業部門「xAI」の長期的な収益性、そして「物理的な宇宙インフラ」という他のAI企業が持たない独自の競争優位性を市場が過小評価していると主張する 。
一方、激震が走ったのが取引開始当日だ。CFRAのアナリスト、キース・スナイダー氏は、6月12日の取引開始からわずか1時間足らずで、スペースXに希少な「売り」レーティングを発行し、目標株価を115ドルに設定した 。
この目標値は初日の終値から約29%の下落を意味し、同社の適正時価総額をわずか1.5兆ドル(CFRAの2027年売上高予想の20.2倍)と断じるものだ。スナイダー氏は「極めて高いバリュエーション期待」「膨大な設備投資の必要性」「実行リスクを伴う野心的な成長計画」を売り推奨の理由として挙げている 。