具体的には、「首相として通算8年以上在任したことがある者を、再び首相に選出することはできない」と明記されている 。1990年5月2日以降の任期が算定対象となるため、1998年から2002年、そして2010年から2026年まで断続的に通算約20年首相を務めたヴィクトル・オルバン氏は、この規定によって将来にわたり首相の資格を完全に喪失する
。これは、4月の選挙戦でマジャル氏が掲げた「権威主義への回帰を阻止する」という主要公約を具現化したものである
。
同庁は2023年に制定された「主権保護法」に基づき、「外国の利益に奉仕する」と見なされた個人や団体を広範に調査する権限を持つ機関として創設された 。しかし、その運用実態は、反対派の政治家や独立系メディア、市民団体に対して圧力を加える政治的武器に他ならないと、国内外から激しい批判を浴びていた
。欧州委員会は2024年10月、同法がEU法(私的生活の権利など)に違反するとして、ハンガリーを欧州連合司法裁判所に提訴していたほどだ
。
これらのトラストは、多額の国家資産や公的資金を従来の政府の監督が及ばない形で運用する受け皿となり、オルバン氏の政治権力の延長線上で機能してきたと指摘されている 。今回の改正により、そうした資産を公的所有と国の管理下に再編することが可能となった。これは、前政権の権力基盤の経済的支柱を取り除く狙いがある
。
ハンガリーの基本法改正には、議会の3分の2以上の賛成が必要だ。これまでは、故オルバン首相率いるフィデス党が2010年以降、このハードルを超える議席を維持し、選挙制度や司法、メディア法などを自党に有利に作り変える「非自由民主主義(Illiberal Democracy)」体制を築き上げてきた 。
しかし2026年4月の選挙でティサ党が地滑り的勝利を収め、憲法改正が可能な超党派多数を確保したことで、状況は一変した 。マジャル新政権は、この権力を「民主主義のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)を再建するため」に行使する立場を鮮明にし、速やかに行動に移した
。改正案は新政権発足からわずか1カ月余りの5月20日に提出されている
。
今回の憲法改正は、ハンガリーが16年間続いた「オルバン・システム」に制度的な終止符を打ち、新たな政治の枠組みへと移行する、強力な第一歩として記憶されるだろう。
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