拡大する財政赤字を埋めるため、サウジアラビアの借入ペースは加速している。2025年末時点で中央政府の債務残高は1兆5190億リヤル(対GDP比33%)だった 。それが2026年第1四半期末までに、約1.67兆リヤルへと、わずか3か月で約10%も膨れ上がった
。政府の公式見通しでは年末の債務残高を1兆6220億リヤルとしていたが、第1四半期の軌道はすでにこれを超過している
。
1月に承認された2026年度の年間借入計画では、計画上の赤字と520億リヤルの償還債務を賄うため、総額2170億リヤル(578億ドル)の資金調達が必要とされている 。ドル建て債務の発行額は2025年に49%急増し、総額は約1000億ドルに達した
。政府と公的投資基金(PIF)の双方が債務市場への依存を強めており、アリアンツの2026年6月のカントリーリスク報告書では、外貨準備の取り崩しと対外借入の増加により「対外脆弱性が高まっている時期」と指摘されている
。
政府が中核的な財源として依存するサウジアラムコの配当金は、その支払い能力の低下と衝突しつつある。アラムコは2026年第1四半期の基本配当として、前年同期比3.5%増の219億ドルを宣言した 。しかし、同期間に同社が生み出したフリーキャッシュフロー(純現金収支)はわずか186億ドルであり、四半期だけで33億ドルの資金不足が発生している計算だ
。四半期配当が営業キャッシュフローを上回ったのは、パンデミック時以来初めてのことである。
6月9日、アラムコはこの219億ドルの配当を支払った。これにより、同社の現金準備高は第1四半期末の752億ドルから約533億ドルに減少し、これは長年にわたる配当支払い後の現金残高として最低水準となった 。新たな76~80ドル台という低油価の下では、第2四半期のフリーキャッシュフローはさらに弱含む可能性が高く、次回の配当義務を前に現金バッファーを再構築することは極めて困難だ。アラムコの株式の大半を保有する政府は、配当維持のためにアラムコに更なる借入をさせるか、配当を削減して国家予算に新たな穴を開けるか、あるいは歳出削減を迫るかという、いずれも受け入れがたい選択肢に直面している。
国家改革構想「ビジョン2030」のギガプロジェクトを推進する主要エンジンである公的投資基金(PIF)は、極めて重要な局面でバランスシートの制約に直面している。アラムコからの配当収入はすでに急減しており、2025年の総配当額は前年の1240億ドルから855億ドルへと、385億ドルも減少した。この変動は、ほぼ全てが業績連動型配当の消失によるものである 。プロジェクト支出を維持するため、PIFも政府と同様に債務市場での資金調達に乗り出している。原油収入がさらに減少し、世界の借入コストが高止まりする中で、国内プロジェクトへの資金供給や海外投資の余力は著しく低下している。アリアンツの報告書も、政府とPIFの双方が、それぞれの財政ギャップを埋めるために借入を増やしていると指摘している
。
今回の和平枠組み合意は、サウジアラビアにとって極めて皮肉なストレステストとなっている。差し迫った軍事的脅威を取り除き、世界の重要航路の詰まりを解消する一方で、リヤドの財政モデル全体が依存してきた高油価という前提をもぎ取ってしまったからだ。サウジは2026年後半に、財政的余裕をまったく持たずに突入した。年間赤字予測の大半を第1四半期で使い果たし、債務は年率二桁で増加し、アラムコは稼ぐ以上の現金を支払い、政府系ファンドは準備金を運用するどころか借入に走っている。
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