ノルウェーの戦いは、6月16日のイラク戦(ボストン)で幕を開け、続いてセネガル戦(6月22日、フィラデルフィア)、そしてフランス戦(6月26日、ボストン)と続く 。最初の2試合でいかに勝ち点を積み上げられるかが、決勝トーナメント進出の鍵を握る。
現在のノルウェー代表を率いるのは、1998年フランスW杯に選手として出場した経験を持つストーレ・ソルバッケン監督。自身も大舞台を知る指揮官は、愛弟子であるハーランドに全幅の信頼を寄せる。
代表合宿中、ソルバッケン監督はハーランドを**「世界最高のゴールスコアラー」**と断言し、「彼はピークのコンディションにある。トレーニングでのパフォーマンスは常に向上している」と最大級の賛辞を送った 。さらに、メディアの過熱する注目に対しても動じないハーランドの姿勢を「気さくなスーパースター」と表現している
。
今回のノルウェー代表は、もはやハーランドと主将マルティン・ウーデゴールだけのチームではない。元ノルウェー代表FWでチェルシーでも活躍したトーレ・アンドレ・フローは、現在のチームについて「複数のメジャースターがおり、試合結果を大きく左右できる選手は2人だけではない。チーム全体に脅威がある」と高く評価する 。
1998年のフランスW杯を最後に、ノルウェーは主要国際大会から長く遠ざかっていた。国民が待ち望んだ28年越しの悲願達成。その重みは、チームの大黒柱であるハーランドの双肩に特に重くのしかかっている。
2025年11月、サンシーロでのイタリア戦でW杯出場を決めた直後、ハーランドは世界中のメディアに対し、喜びよりも先にこみ上げてきた感情を正直に吐露した。「嬉しいというより、『やっとか』という安堵の気持ちが大きかった」。
当然だ。彼は代表49キャップで驚異の55得点を記録し、すでにノルウェー代表の歴代最多得点者となっている 。その点取り屋が、これまでW杯とは無縁だったこと自体がアンバランスだった。予選では全8試合でゴールを決め、半分の試合で2得点以上をマーク。最終的に16ゴールを積み上げ、これは欧州予選における1シーズン最多得点記録に並ぶ数字だ
。
そんな重圧の中でも、ハーランドは驚くほどリラックスしてW杯への準備期間を過ごしていることで話題となった。
6月11日、初戦のわずか5日前、ハーランドはノルウェー代表のチームメイト数名とともに、ノースカロライナ州ローリーのレノボ・センターで開催されたNHLスタンレーカップ決勝の第5戦を観戦した 。対戦カードはカロライナ・ハリケーンズ対ベガス・ゴールデンナイツ。ハーランドはハリケーンズのジャージを身にまとい、地元ファンに手を振るなど、試合を心から楽しむ様子が目撃されている
。彼の背番号はクラブでも代表でもおなじみの「9」だった。
もっとも、これは単なる息抜きではない。ノルウェー代表のベースキャンプ地がノースカロライナ州グリーンズボロに設定された背景には、選手たちが初めての大舞台で過度なプレッシャーを感じないように、というソルバッケン監督らの配慮がある 。チームメイトと共にゴルフに興じたり、母国から離れた地でアメリカの国民的スポーツを体験することも、チームビルディングの一環なのだ
。
今から32年前、アルフ=インゲがプレーした1994年のノルウェーは、グループリーグ3試合でわずか1得点。1勝も挙げられずに大会を去った。当時のチームで無得点に終わったFWの息子が、今や代表史上最多のゴールを量産する絶対的エースとなり、同じ場所でW杯デビューを飾る。この数奇な因縁に、ハーランド自身もユーモアを交えて言及している 。
W杯初出場。死の組。父が立ったボストンのピッチ。全てのストーリーが、6月16日のイラク戦から始まる。
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