中でも深刻なのがコートジボワールだ。同国はほぼ全面的な渡航禁止に分類されており、一般のサポーターが観戦ビザを取得することは事実上不可能となっている。コートジボワール代表サポーター全国委員会のジュリアン・クアディオ・アドニス会長は、「アメリカ政府は、コートジボワールを含む特定の国からのサポーターの入国を望んでいない」と述べ、同国からの応援団派遣を断念したと発表した。
現地報道によれば、セネガルからも同様のビザ拒否が広がっており、西アフリカのスポーツ省庁筋は「計画していた応援旅行団が完全に解体された」と状況を説明している。アメリカは78試合を開催する主たるホスト国でありながら、複数の出場国のファンを締め出していることになる。
34歳のオマル・アブディルカディル・アルタン氏は、ソマリア人として初めてW杯のピッチに立つ審判になるはずだった。6月6日、外交旅券と有効なビザを携えてマイアミ国際空港に降り立った彼を待っていたのは、米国税関・国境警備局(CBP)による入国拒否の通告だった。
当初「審査上の懸念」とされた理由は、後に「テロ組織の構成員と疑われる人物との関係」と具体化された。ホワイトハウスのFIFAタスクフォースを率いるアンドリュー・ジュリアーニ氏は「正当な理由がある」と述べたが、詳細は明らかにされていない。
FIFAは「主催国の移民手続きには関与しない」との立場を明確にし、アルタン氏が大会で審判を務めることはないと発表した。しかし同時に、FIFAは同氏に対し大会報酬全額を支払うことを決定した。モガディシュに帰国したアルタン氏を、地元では英雄として迎える報道もあった
。この一連の対応は、国際スポーツ組織の理念と主権国家の法執行の間に横たわる深い断層を浮き彫りにしている。
強硬な移民政策と入国管理の厳格化は、目に見える形で経済的な影響を及ぼし始めている。
これらの事象が示すのは、グローバルイベントと国境管理の間にある構造的な矛盾である。104試合中78試合をアメリカが主催しながら、出場国の国民全体の入国を拒否する政策を維持し、事前に認定されたFIFA役員でさえも入国審査で門前払いされる現実が、「大会がもたらす経済的恩恵」という前提そのものを揺るがしている。
世界の注目が集まる舞台で、もてなしの精神と安全保障の論理がせめぎ合う中、大会は序盤から難題に直面している。
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