課税対象となるのは、全世界での売上高が7億5000万ユーロ以上、かつフランス国内での売上高が2500万ユーロ以上の企業である。対象となるのは約30社で、その大半が米国企業である 。フランス政府は、従来の法人税の枠組みでは捉えきれないデジタル経済活動への課税に必要な措置だと擁護してきた。一方、米国政府はこれを、国際的な税制の規範を損ない、米国企業を不当に罰する差別的なものだと見なしている
。
2026年の最後通牒は、単発的な火種ではない。それは5年以上前に始まった貿易戦争の再燃に他ならない。
2019年12月: 発足直後のトランプ政権は、新たに施行されたDSTに対抗し、シャンパンやチーズ、ハンドバッグ、化粧品など、24億ドル相当のフランス製品に最大100%の関税を課すと脅した 。米国通商代表部(USTR)は正式に通商法301条に基づく調査を開始し、報復関税の対象リストへのパブリックコメントを募った
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2020〜2021年: 経済協力開発機構(OECD)が主導する国際的なデジタル課税の枠組み交渉を受けて、紛争は一旦休止状態に入った。しかし、その後の協議は完全な合意には至らず、フランスの単独課税は維持されたまま、米国の不満も解消されなかった 。
2026年1月: 舞台を変えた緊張が再燃した。トランプ大統領は、マクロン大統領がガザ和平を巡る「平和理事会」構想への参加を拒否したことを受け、フランスワインに200%の関税をかけると脅したのだ 。この脅しはDST問題とは別個のものだったが、フランスワインが二国間関係における“圧力のツール”として繰り返し使われるパターンを確立した。
このタイミングは、米仏間の二国間協議の議題がデジタル課税紛争一色になることを確実にした。ウクライナ情勢や世界経済の協調といった共通の優先課題に集中する代わりに、両首脳は貿易をめぐる直接対決がすでに始まっている状態でサミットに臨むことになったのである 。
マクロン大統領は今、板挟みとなっている。フランスの主権的な税制を守りつつ、自国が誇る輸出産業の一つに懲罰的な打撃を与える貿易戦争を何としても回避しなければならないのだ。
欧州のワイン生産者たちは、より広範なパターンにも注目している。この業界は、わずか1年の間に、デジタル課税、地政学的な和平構想、そしてEU全体の通商摩擦という、それぞれ異なる理由による個別の関税脅威の標的にされている 。いずれの場合も、ワイン生産者は「自分たちの本業とは何の関係もない争いの、単なる『巻き添え被害』だ」と主張している。
フランスワインへの関税脅威は、単に税制や貿易統計の問題ではない。それはより深い構造的な亀裂を露呈させている。
米国は、一方的なデジタルサービス税は米国企業を不当に標的にし、国際貿易の原則を損なうと主張し続けている。一方、フランスと欧州連合(EU)は、世界的な税制改革の遅々としたペースに業を煮やし、独自の財源確保策を推し進めている。
OECDは2021年に画期的な国際課税協定を仲介したものの、デジタル課税に関する部分は、いまだ法的拘束力のある形では完全に履行されていない。それが実行されるか、あるいはワシントンとパリが直接的な取引で合意するまで、フランスワインへの懲罰的関税という現実的なリスクは消えないだろう 。