企業間で取引されるモノの価格を示す国内企業物価指数(CGPI)は、5月に前年同月比6.3%上昇し、市場予想の5.5%を大幅に上回った 。これは2023年3月以来、最も速い卸売物価の上昇ペースであり、4月の改定値である5.3%上昇から急加速したことを示す
。
主犯はエネルギー価格だ。イランを巡る紛争の激化が原油価格を高止まりさせており、輸入エネルギーへの依存度が高い日本経済を直撃している 。日銀のデータによると、石油・石炭製品の価格は前年同月比13.8%も急上昇し、石油化学製品に関連する化学製品の価格も13.4%上昇した
。
この卸売物価の高騰は、今まさに消費者物価にも波及しようとしている。日銀は4月の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、原油高を明示的に理由に挙げ、2026年度の消費者物価(除く生鮮食品)の見通しを、従来の1.9%から2.5%~3.0%の範囲へと大幅に上方修正した 。
利上げを急ぐ必要性は、円の持続的な弱さによってさらに増幅されている。円相場は1ドル160.5円近辺で推移しており、2024年7月以来の安値圏に張り付いている 。円安はエネルギーや食料品の輸入コストを押し上げ、家計や中小企業を苦しめる「コストプッシュ型」インフレのさらに別の層を追加している。アナリストは、6月の利上げは本質的に、円安の進行が国内インフレを助長するのを防ぐための「防御的」な動きであると指摘している
。
今回の決定は、中央銀行のトップが会合の場にいないという、史上初の事態の中で行われる。日銀は6月10日、植田和男総裁(74)が肝嚢胞(のうほう)の感染症治療のために入院し、今回の会合全体を欠席すると発表した 。
政策委員会の議事進行は氷見野良三副総裁が務め、会合後の記者会見の運営は内田眞一副総裁が担当する 。植田総裁はリモートで職務を継続し、投票を棄権する見込みだが、日銀幹部やアナリストは、決定自体に支障はないと断言している
。
しかし、植田総裁の不在はコミュニケーション面で重大なリスクをはらんでいる。植田総裁は6月3日、金融政策決定会合で利上げの是非について「包括的な議論」を行うと宣言し、この発言は市場で利上げへの事実上の予告と広く解釈されていた 。市場関係者は今回、植田総裁による直接的なメッセージ発信がない中で、声明文や記者会見の内容から、今後の追加引き締めに向けた信頼に足るコミットメントが示されるかどうかを厳しく精査することになる
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6月の会合は、より長期的な利上げシナリオの「布石」と広く見なされている。今回の利上げを予測したのと同じロイター調査では、政策金利が2026年第4四半期に1.25%、2027年第3四半期には1.50%に達するとの中央予測も示されている 。これは4月時点の調査から変わっていない
。ブルームバーグ調査でも、51人の回答者のうち49人が、年内にあと2回の利上げを予想しており、この道筋を裏付けている
。
この先の利上げシナリオは、日銀の元政策委員らが持つ見解とも一致している。元日銀審議委員の桜井真氏は、日本の中立金利(景気を刺激も冷却もしない金利水準)は1.5%から1.75%の間にあるとの見方を示している 。また、国際通貨基金(IMF)も、日本の政策金利は2027年末までに中立的な水準に達するとの予測を発表している
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