要するに、当初の「2,000万バレル」というのは海峡で止められた総量であり、世界の収支から抜け落ちた純粋な不足量ではなかった。実際の純減は、そのおおむね半分だった。
米国と同盟国は、戦略備蓄を積極的に取り崩し、失われたスポットバレルを直接置き換えた。危機前のOECD戦略備蓄は約12億バレルだったが、取り崩しは急速で、このまま海峡閉鎖が続けばOECDの石油在庫は2023年の統計開始以来、最低水準に落ち込むとEIAは警告している 。
中東以外の生産者、すなわち米国のシェールオイル、ブラジル、ガイアナ、カナダのオイルサンドなどが一斉に増産した。IEAは、中東の1,000万バレル減の一部をカザフスタンやロシアといった非OPEC+諸国の増産が埋め合わせたと明記している 。5月末時点で、EIAは湾岸地域全体で約1,050万バレルの生産が停止していると評価し、世界のその他地域が必死で穴埋めしている規模を示した
。
価格高騰と戦争に伴う不確実性が消費を蝕んだ。IEAは2026年の世界原油需要が前年比で42万バレル減少すると予測。これは戦前予測からの130万バレルの下方修正にあたる 。OPECは需要成長率の見通しを140万バレルから120万バレルへ引き下げた
。世界銀行は、2026年第2四半期の世界の石油生産量が前年同期比で日量690万バレル(6.6%)減少し、新型コロナウイルス以来の大幅な四半期減になると見込んでいる
。
エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは、第1四半期の決算説明会で、業界の商業在庫、政府の戦略備蓄、そして航海中のタンカーが緩衝材として機能しているため、供給不足の全面的な影響はまだ市場に表れていないと指摘した 。5月中旬にはCNBCが、世界の備蓄が前例のない速度で減少しており、海峡閉鎖が続けば危険な低水準に達するリスクが現実味を帯びていると報じている
。
ゴールドマン・サックスは3月以降、一連の予測改定を通じて今回の途絶を追跡してきた。2026年6月1日時点の最新の基本シナリオでは、ホルムズ海峡を通過する船舶交通が6月末までに正常化すると想定している。ただし、重要なのは、同行が長期化リスクはますます高まっていると明示的に警告している点だ 。
主な予測ポイント:
市場が直面しているのは、単なる供給不足だけではない。ゴールドマンの基本シナリオは、すでに2025年の180万バレルの供給過剰から、2026年第2四半期には960万バレルの供給不足へと需給バランスが劇的に反転することを織り込んでいる 。
しかし、ひとたび海峡が再開されれば、滞留していた中東産の大量のカーゴが市場に流入し、今度は突然の供給過剰を引き起こす可能性もある。フィッチ・レーティングスや先物市場は、すでにこの反転シナリオを織り込み始めている 。
正常化が2026年後半にずれ込むのか、それとも急な再開が逆方向に価格を不安定化させるのか。いずれにせよ、ホルムズ海峡危機はわずか数カ月の間に、世界の石油市場の計算式を根本から書き換えた。最初の衝撃を和らげた緩衝材は有限だ。在庫が減り、戦略備蓄が運用上の下限に近づくにつれ、これ以上の遅延を許容できる余地は急速に狭まっている。
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