ミストラルAIの資金調達力は、欧州テック業界の中でも突出している。
この巨額調達の背景には、驚異的な収益成長がある。
アルトゥール・メンシュCEOが明らかにしたところによると、ミストラルの年次経常収益(ARR)は、2025年1月時点の約2000万ドル(約31億円)から、2026年初頭には4億ドル(約620億円)超へと、わずか1年で約20倍に拡大した 。
2026年5月、ミストラルはオーストリア・リンツに拠点を置く物理AIスタートアップ「エミーAI」を買収した。非公開企業だが、内部文書によると取引総額は最大3億3000万ユーロ(約510億円) と評価されている 。
エミーAIは、気流、熱伝導、材料応力といった複雑な物理現象をシミュレーションするAIモデルに強みを持ち、航空宇宙、自動車、半導体業界を主要顧客としている 。ミストラルはこの買収により、産業用エンタープライズAI分野での製品群と専門性を大幅に強化した。これは、欧州の戦略的AI買収として最大級の案件と見なされている
。
ミストラルはフランス政府や欧州委員会から「欧州のAIチャンピオン」として期待され、OpenAIやGoogle、Anthropicといった米国勢、そして中国のAI企業に対抗しうる「最後の砦」とも称される 。
2023年4月の創業以来、オープンウェイト(重み付け公開型)LLMを基本理念とし、オープンソースとプロプライエタリの両方のモデルを展開してきた 。今回の30億ユーロ調達も、米中に比べて桁違いに潤沢な資金を持つ競合との「計算資源獲得競争」に打ち勝つための軍資金と位置づけられている
。
CEOのアルトゥール・メンシュ氏は、欧州が米国や中国のプラットフォームに依存するのではなく、独自のAIインフラを構築すべきだと繰り返し訴えている 。その実現に向けた次の一手として、本ラウンドの行方に世界中の投資家とテック業界の視線が集まっている。
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