NASAゴダード宇宙研究所ほかの研究チームが、産業革命前(1750年)から現在(2010年)までの対流圏オゾンの変化を分析したところ、その放射強制力(温暖化を促す力)は約410 mW/m²と算出されました 。この正の放射強制力が、地球温暖化の一因となっていることは明らかです。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)も、非CO₂ガスの重要性を強調しています。同報告書によると、産業革命以降の歴史的な気温上昇への寄与は、CO₂が約0.8℃であるのに対し、メタンだけで約0.5℃に上ります。これに一酸化二窒素やフッ素系ガスなど他の非CO₂ガスの影響が加わります [1, 7]。
京都議定書やパリ協定といった国際的な気候変動枠組みでは、主に大気中での寿命が長く、地球全体によく混合される「直接的」な温室効果ガス(CO₂、メタン、一酸化二窒素、代替フロンなど)が排出量の算定・報告対象となってきました 。
間接的温室効果ガスが、これらの主要な法的枠組みにおける「ガスバスケット」から除外されてきた正確な法制史を、今回提供された情報源だけで詳細に立証することはできません。しかし、その背景には、以下のような科学的・政策的な複雑さがあったと推察されます。
それでも、これらの物質の排出を削減することには、気候変動対策として大きなメリットがあります。それは、対策の効果が現れるまでのスピードです。
間接的温室効果ガスが生成する対流圏オゾンの大気中寿命は数週間から数ヶ月と、CO₂(数百年以上)やメタン(約12年)と比較して極めて短いものです。そのため、前駆体である一酸化炭素や窒素酸化物の排出を削減すれば、大気中のオゾン濃度は比較的早く低下し、温暖化の抑制効果が数年以内という短期間で現れる可能性があります [8, 16]。これは、大気中のCO₂濃度を下げるのに長い時間を要するのとは対照的であり、「即効性のある」温暖化対策として期待されるゆえんです [3, 8]。
さらに、これらの物質の削減は、大気汚染の改善という、地域社会にとってより直接的で目に見える利益をもたらします。対流圏オゾンは、温室効果ガスであると同時に、人間の健康や農作物に悪影響を及ぼす主要な大気汚染物質でもあります。その前駆体を減らすことは、気候変動の緩和と大気環境の改善を同時に達成する、まさに「一粒で二度おいしい」対策と言えるでしょう [3, 8, 16]。
パリ協定が長期的な気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求する中で、CO₂の大幅削減は不可欠です 。しかし、その目標達成への道のりを確かなものにするためには、今回取り上げたような「盲点」となってきた短期寿命の気候強制因子への対策も、これまで以上に重要なピースとして浮かび上がってきています [13, 14, 16]。
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