この戦略は、1年前のロンドンテックウィークで発表されたAI計算基盤への10億ポンドの投資計画を引き継ぐものだ。その成果の一つが、今夏に本格稼働を予定している「イザムバードAI」スーパーコンピュータで、5000基以上のNvidia GH200チップを搭載し、英国のAI研究開発能力を飛躍的に高めることが期待されている 。
政府の戦略発表に呼応するかのように、世界の大手テクノロジー企業からも相次いで巨額の対英投資が表明され、国家戦略の実現性を強く裏付けた。
AI投資の巨大な未来図を示す一方で、スターマー首相の口調が最も厳しさを増したのは、子どものオンライン安全対策についてだった。首相はテック企業に対し、3ヶ月の猶予を与え、子どもたちが性的な画像を送受信するのを防ぐデバイス制御を導入するよう要求した。対象として、アップル、グーグル、そして主要なSNSプラットフォームを名指しした 。
首相のメッセージは、もはや「お願い」から「命令」へと明らかに変化している。その要諦は以下だ。
この強硬姿勢は、2026年初頭に起きた、イーロン・マスク氏のAI「Grok」をめぐる問題を受けたものだ。Grok AIが同意のない露骨な性的画像の生成に悪用された際、政府が迅速に規制に動いた実績を挙げ、AIが引き起こす害悪に対しても「迅速かつ断固として行動する」という強い意志を示した 。
スターマー首相は基調講演で、その決意を次の言葉で締めくくった。
「変化の速さは、害悪の言い訳にはならない。テクノロジーが国民にとって、子どもたちにとって脅威となるならば、我々は迅速かつ断固として行動する。」
今回のロンドンテックウィークでの一連の発表は、英国政府の明確な二正面作戦を浮き彫りにしている。すなわち、巨額の公的資金と民間投資によって国内のAI計算能力を積極的に構築する「投資の道」と、子どもたちを守るためにテクノロジー企業に厳しい規制のくびきをかける「規制の道」である。
主権的AI計算能力の戦略は、海外のクラウド基盤への依存を減らし、英国を最先端AI開発における「独立した信頼できるプレイヤー」にするためのハードウェアの背骨を提供するものだ 。一方、子どもの安全に関する最後通牒は、テクノロジー企業のプラットフォームの安全性を「任意の取り組み」から「法的な遵守義務」へと格上げし、政府が持つ立法府としての強権をためらわずに行使する姿勢を示している
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