これらの数値は、監査を受けた公式な決算書ではなく、あくまで会社側の発表である点には注意が必要です 。また、顧客企業の具体的な名前も、機密性の高い業界との取引であることから、現時点では明らかにされていません。とはいえ、インフラ系のスタートアップが創業直後にこれだけの収益をあげるのは異例で、潜在的な需要の大きさをうかがわせます。
Deliverance AIの製品は「エージェンティックOS(Agentic Operating System)」と呼ばれ、単一のサブスクリプションで3つの要素を提供します 。
金融サービス、製造業、ライフサイエンスなど11の業種ドメインにあらかじめ対応したAIエージェントを搭載。導入初日から、与信審査や創薬研究といった実際の業務フローで使える状態を目指しています 。
AIが自律的に判断する「エージェント」のすべての動作を、事前に定義されたルール(役割ベースのテンプレート)で制御。誰が何をしたかの監査証跡を完璧に残せるため、規制対応が必須の業務でも安心です。また、処理内容に応じて最適なAIモデル(高度な商用モデル、オープンソース、自社チューニング版)を動的に切り替える機能も備えています 。
営業担当者ではなく、実際にシステムを構築するエンジニアが契約当初からチームに加わり、4週間以内の本番稼働をゴールに支援します 。
このプラットフォームが欧州の規制業界で特に注目を集める理由が、**データ主権(データ・ソブリンティ)**への徹底的なこだわりです。
システムの導入形態は、一般的なパブリッククラウドはもちろん、顧客専用のプライベートクラウド、自社保有のデータセンター、さらには**インターネットから物理的に完全に遮断された環境(エアギャップ)**まで、5つのモードから選択可能です 。どの形態でも、データの処理と推論はすべて顧客の管理範囲内で完結します。
そして、マーケティング上の最大の差別化要因が、「英国で創業され、英国およびEUに本社を置くため、米国クラウド法(US CLOUD Act)の適用対象外」という点です 。米国クラウド法は、米国の捜査当局が、たとえデータが海外のサーバーに保存されていても、米国企業に対してその提供を強制できる法律です。欧州の規制当局や政府機関にとって、この管轄権の違いは、システム選定の決定的な要素になり得ます。
Deliverance AIは、大規模言語モデルそのものを開発するのではなく、AIを「安全に、管理下で、実際の業務で使う」ためのインフラを提供します。AIの業務適用で最も大きな障壁となるコンプライアンスとデータ主権の問題に、正面から応えようとしているのが特徴です。