欧州宇宙機関(ESA)の位置天文衛星「ガイア」などによる、何百万もの星々の正確な位置、運動、化学組成のデータを用いて、研究チームは「恒星ストリーム」と呼ばれる特徴的な星の流れを特定しました。これらは、天の川銀河の重力によって引き裂かれた矮小銀河(小さな銀河)が、細長く伸ばされながらゆっくりと溶けていく残骸です。天空に広がるこれらのストリームを追跡することで、まるで目に見えない暗黒物質を探る敏感な重力プローブのように利用し、銀河全体を取り巻く巨大な暗黒物質ハロー(ドーナツ状の構造)の重量と地図を描き出すことに成功したのです
。
極小の世界では、錬金術を思わせるような発見が評価されました。3人の物理学者は、原子1個分の薄さしかない2枚の炭素シート(グラフェン)を重ね合わせ、片方を「魔法の角度」と呼ばれる約1.1度だけ回転させることで、それぞれの単層では全く見られない異常な電子特性が生まれることを示しました。
アラン・マクドナルドは2011年に、この正確な角度で二層グラフェンをねじると、電子のエネルギー地形が平坦になり、エキゾチックな量子現象を発現させる格好の「遊び場」が作られることを理論的に予測しました。パブロ・ハリロ=エレーロと彼のチームは2018年にこれを実験で実証し、単に電子密度を変えるだけで、この材料が絶縁体と超伝導体(電気抵抗がゼロで電流を流せる状態)の間を行ったり来たりする様子を観測しました
。エヴァ・アンドレイは、ねじれた原子の並びからいかにしてこうした電子特性が生じるかを直接可視化する、走査型トンネル顕微鏡による基礎研究を提供しました
。
現在「ツイストロニクス」として知られるこの分野は、材料工学における全く新しいパラダイム(枠組み)を切り開きました。これまでのように化学組成を変えるのではなく、幾何学的なねじれを制御することで、科学者は物質を強制的に新たな量子状態に導くことができるようになったのです。これは、より頑強な超伝導体や、従来にない電子デバイスへの道を拓くものです。
受賞者: クリスティーン・ホルト(英ケンブリッジ大学)、ケルシー・C・マーティン(米サイモンズ財団)、エリン・シューマン(独マックス・プランク脳研究所 / 英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)、オズワルド・スチュワード(米カリフォルニア大学アーバイン校)
神経科学賞は、生物学の古典的な定説を覆しました。長年にわたり、ニューロンは必要なタンパク質をすべて細胞中心部の「司令部」で作り、それを「宅配便」のように遠く離れたシナプス(神経接続部)へと運搬している、というのが支配的なドグマ(教義)でした。ところが、この4人の科学者たちは、はるかにエレガントなシステムを証明したのです。脳は、特定のシナプスに必要なタンパク質を、まさにそのシナプスの現場で調達していたのです
。
この発見は、学習と記憶の理解に根本的にかかわるものです。シナプスが刺激されると、迅速な局所タンパク質合成が起こることで、遠くの核からの「指示」を待たずに、個々の接続が強くなったり弱くなったりします。これこそが、脳の可塑性の分子的基盤となるメカニズムです。ホルト、マーティン、シューマン、スチュワードの各氏の研究は総体として、タンパク質を作る細胞内の「工場」であるリボソームが、樹状突起や軸索にも配備されていること、そしてこの局所合成が、発達中の脳が正しく配線され、成熟した脳が新しい経験に適応するために不可欠であることを実証したのです
。
今回の3つのカブリ賞はそれぞれ、「銀河がいかにして形成されるか」「物質をいかに制御できるか」「脳はいかにして記憶するか」という根本的なパラダイムを変えた業績を称えるものです。2026年の受賞者たちは、9月にオスロで開催される授賞式で、ノルウェー王室臨席のもと、それぞれの賞金を受け取る予定です。
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