この資金調達ラウンドにおける目標評価額は100億ドル(約1兆4000億円)以上とされており、これは2020年の本家IPO時の評価額と比較すると非常に控えめだが、国際事業単体での独立性と成長性を市場に示す初めての試金石となる 。
複数の情報筋によると、この増資は単純な資金需要だけでなく、2026年内にも実現が期待される 「香港取引所へのIPO」 に向けた重要な布石と見なされている。現時点で具体的な上場スケジュールは確定していないものの、今回の投資家探しは上場への「助走」としての意味合いが強い 。
2026年5月、Alipay+は中南米のフィンテック企業「PVS」と提携し、海外旅行者向けの越境QRコード決済サービスを チリとアルゼンチンで開始。 これは同社にとって中南米市場への本格的な足がかりであり、今後も展開地域を広げる方針だ 。
さらに、Alipay+はマスターカードとの提携により、QRコード決済だけでなくNFC(近距離無線通信)によるタッチ決済にも乗り出している。これにより、提携ウォレットのユーザーがマスターカードの非接触端末でタップ決済できるようになり、世界1億5000万店舗以上で利用可能になるという 。
アント・インターナショナルは、決済手段の拡大に加えて、「通貨」そのものにも事業領域を広げようとしている。
香港金融管理局(HKMA)は2026年4月に、HSBCとスタンダードチャータードに対し、初のステーブルコイン発行ライセンスを交付した。アント・インターナショナルはこの第1陣には含まれなかったが、依然として積極的な申請者であることは確かだ 。
香港は近年、仮想通貨やステーブルコインのハブを目指し、法整備を急速に進めている。
この動きは、中国政府の厳しい監視下にある本体会社(中国の決済事業)ではなく、相対的に規制の緩やかでグローバル市場に開かれた国際部門を上市させることで、アント・グループが公的市場への復帰を果たす、という戦略的な「再起動(リブート)」を意味している 。
この一連の動きの背景を理解するには、2020年の「悪夢」を避けて通れない。
アント・インターナショナルの今回の動きは、単なる資金調達ではない。
それは、過去に潰えた「夢の巨大上場」の記憶を拭い去り、より柔軟な国際事業をフックにして、アント・グループがパブリックカンパニーとしての借りを返そうとする、極めて戦略的な一手なのだ。
世界で20億件の取引を処理し、今や30を超える決済手段と、ステーブルコインまでも取り込もうとする同社。その再出発の地として選んだのが、仮想通貨とフィンテックで存在感を増す香港という舞台であることも、決して偶然ではない。
Comments
0 comments