原油価格が高騰を回避している最大の要因は、世界最大の原油輸入国である中国の「異変」だ。データ分析会社ケプラーによると、中国の海上原油輸入量は5月に日量約670万バレルと、過去10年で最低の水準にまで落ち込んだ 。これは戦争前の日量約1100万バレルからの急減であり、事実上、失われた湾岸産原油の膨大な部分を中国の需要減が相殺している格好だ
。
仏ソシエテ・ジェネラルのアナリストは、この需要側の減少が「最も強力な価格抑制要因」であると分析している 。中国のこの動きは、部分的な意図に基づくものだ。中国政府は、推定約14億バレルとされる莫大な商業・戦略備蓄を取り崩すことで、中東からの供給が途絶えても約6カ月間は持ちこたえられるとみられる
。高騰するスポット市場で希少な原油を追いかけるよりも、国内の備蓄を活用する戦略を選んだのだ。
さらに、中国の製油所は稼働率を大幅に引き下げており、処理量は前年比で日量約180万バレル減少している 。エネルギーアナリストのローリー・ジョンストン氏は、中国政府が戦略備蓄を国内市場に静かに注入している可能性が高く、この行動が地政学的緊張にもかかわらず価格上昇が抑制されている一因だと指摘する
。
現在の相場の落ち着きは、極めて不安定な土台の上に成り立っている。ブレント原油は、多くの専門家が当初恐れたような150ドルを超える爆発的な上昇ではなく、「1バレル95~110ドルという比較的狭いレンジ」で取引されている 。しかし、このレンジを支える柱はいずれも一時的なものだ。
Comments
0 comments