英国の動きは2026年に入り急加速した。2025年7月に施行された「オンライン安全法」により、プラットフォームは18歳未満を有害コンテンツから保護する義務を負ったが 、政府はそれだけでは不十分と判断した。
2026年1月21日には、貴族院(上院)が教育法案の修正案として、16歳未満のSNS禁止を盛り込む案を261対150の賛成多数で可決。政府はこの修正案には反対したものの、議会内に強い規制推進の機運があることが示された 。
翌22日、政府は独自の意見公募(パブリックコンサルテーション)を開始。ここではオーストラリアが2024年12月に導入した禁止法を明確にモデルとし、年齢制限、無限スクロールの制限、アルゴリズム規制などが議論された 。5月下旬までに4万7000件もの回答が寄せられている 。
政権中枢からも強い意志が示された。技術相のリズ・ケンドル氏とキア・スターマー首相は、5月下旬に「この分野でゲームチェンジャーが必要であり、我々は行動を起こす」と明言 。そして6月8日、英紙タイムズが、スターマー首相が近日中に「有害」なSNSプラットフォームを16歳未満に禁止し、メッセージサービスなどの比較的安全なオンライン空間へのアクセスは維持する方針を発表すると報じた 。
これに対し、米国は英国の正式発表を待たずに動いた。2026年6月5日、駐英米国大使館を通じて、英国の意見公募に対する公式回答を提出し、16歳未満全面禁止に対する明確な反対を表明したのである 。
この提出文書は、他国の国内政策形成プロセスへの異例の介入であり、以下のように主張している。
米国側の基底には「表現の自由」への強い懸念がある。JD・ヴァンス副大統領はかねてより英国の表現の自由は「後退している」と主張しており、共和党の有力下院議員はオンライン安全法を「英国のオンライン検閲法」と呼んでいた 。今回の提出文書は、外国政府に対するものであるため合衆国憲法修正第1条を直接は持ち出していないものの、その文脈は明らかだ。
米国の反対意見提出は、スターマー首相の発表予定のわずか数日前に行われた。このタイミングは、子どもの安全策を一気に外交案件へと格上げするものだった 。
英国内では、閣内からも慎重論が出ていたことが明らかになっている。一部の閣僚は、禁止策がトランプ大統領を「苛立たせ」、巨大テクノロジー企業に好意的な米政権との関係を損なうことを恐れ、当初は規制に抵抗したという 。
それでも政府は前進を決断した。ケンドル技術相は6月9日、懸念は英国の親たちの意見にあるとした上で、「米国の圧力に揺るがされることはない」と一蹴した 。
この政策を後押しするのは、与野党を超えた幅広い支持だ。最大野党・保守党のリーダー、ケミ・ベイドノック氏は1月、党としてSNSの年齢制限を設けると発表。子どもたちを過激なコンテンツ、商業的搾取、中毒性の高いデザインから守るための措置だと位置づけている 。
議会の支持、詳細な意見公募、そしてオーストラリアという明確な前例の存在が、米国の圧力に直面しても動じない英国政府の自信につながっている。即時の焦点は、この規制がどのような最終形態を取るのか、そして英国の正式発表後、ホワイトハウスが対応をさらにエスカレートさせるかどうかだ。
英国と米国が子どものSNS利用をめぐって対立する構図は、日本にとっても対岸の火事ではない。総務省の調査でも、日本の青少年のSNS利用率は極めて高く、「ネット依存」や誹謗中傷、性犯罪被害といった問題は深刻さを増している。すでに欧米や豪州で始まった「年齢によるアクセス制限」という発想は、日本でもプラットフォーム事業者への規制議論に影響を与える可能性が高い。米国が「表現の自由」や「親の責任」を根拠に政府規制を批判する論理は、今後の日本国内の政策論争を理解する上で重要な参照点となるだろう。
英国の動きは2026年に入り急加速した。2025年7月に施行された「オンライン安全法」により、プラットフォームは18歳未満を有害コンテンツから保護する義務を負ったが 、政府はそれだけでは不十分と判断した。
2026年1月21日には、貴族院(上院)が教育法案の修正案として、16歳未満のSNS禁止を盛り込む案を261対150の賛成多数で可決。政府はこの修正案には反対したものの、議会内に強い規制推進の機運があることが示された 。
翌22日、政府は独自の意見公募(パブリックコンサルテーション)を開始。ここではオーストラリアが2024年12月に導入した禁止法を明確にモデルとし、年齢制限、無限スクロールの制限、アルゴリズム規制などが議論された 。5月下旬までに4万7000件もの回答が寄せられている 。
政権中枢からも強い意志が示された。技術相のリズ・ケンドル氏とキア・スターマー首相は、5月下旬に「この分野でゲームチェンジャーが必要であり、我々は行動を起こす」と明言 。そして6月8日、英紙タイムズが、スターマー首相が近日中に「有害」なSNSプラットフォームを16歳未満に禁止し、メッセージサービスなどの比較的安全なオンライン空間へのアクセスは維持する方針を発表すると報じた 。
これに対し、米国は英国の正式発表を待たずに動いた。2026年6月5日、駐英米国大使館を通じて、英国の意見公募に対する公式回答を提出し、16歳未満全面禁止に対する明確な反対を表明したのである 。
この提出文書は、他国の国内政策形成プロセスへの異例の介入であり、以下のように主張している。
米国側の基底には「表現の自由」への強い懸念がある。JD・ヴァンス副大統領はかねてより英国の表現の自由は「後退している」と主張しており、共和党の有力下院議員はオンライン安全法を「英国のオンライン検閲法」と呼んでいた 。今回の提出文書は、外国政府に対するものであるため合衆国憲法修正第1条を直接は持ち出していないものの、その文脈は明らかだ。
米国の反対意見提出は、スターマー首相の発表予定のわずか数日前に行われた。このタイミングは、子どもの安全策を一気に外交案件へと格上げするものだった 。
英国内では、閣内からも慎重論が出ていたことが明らかになっている。一部の閣僚は、禁止策がトランプ大統領を「苛立たせ」、巨大テクノロジー企業に好意的な米政権との関係を損なうことを恐れ、当初は規制に抵抗したという 。
それでも政府は前進を決断した。ケンドル技術相は6月9日、懸念は英国の親たちの意見にあるとした上で、「米国の圧力に揺るがされることはない」と一蹴した 。
この政策を後押しするのは、与野党を超えた幅広い支持だ。最大野党・保守党のリーダー、ケミ・ベイドノック氏は1月、党としてSNSの年齢制限を設けると発表。子どもたちを過激なコンテンツ、商業的搾取、中毒性の高いデザインから守るための措置だと位置づけている 。
議会の支持、詳細な意見公募、そしてオーストラリアという明確な前例の存在が、米国の圧力に直面しても動じない英国政府の自信につながっている。即時の焦点は、この規制がどのような最終形態を取るのか、そして英国の正式発表後、ホワイトハウスが対応をさらにエスカレートさせるかどうかだ。
英国と米国が子どものSNS利用をめぐって対立する構図は、日本にとっても対岸の火事ではない。総務省の調査でも、日本の青少年のSNS利用率は極めて高く、「ネット依存」や誹謗中傷、性犯罪被害といった問題は深刻さを増している。すでに欧米や豪州で始まった「年齢によるアクセス制限」という発想は、日本でもプラットフォーム事業者への規制議論に影響を与える可能性が高い。米国が「表現の自由」や「親の責任」を根拠に政府規制を批判する論理は、今後の日本国内の政策論争を理解する上で重要な参照点となるだろう。