2026年6月9日に公開されたAI1衛星の設計詳細は、この計画の鍵を握る。翼長70メートルという超巨大衛星で、ピーク時150kW、平均120kWの計算ペイロードをサポートし、宇宙空間での連続稼働を可能にする液体ラジエーター冷却システムを搭載している 。
特筆すべきは、この公募価格が固定価格方式であり、引受銀行による需要積み上げプロセスを経ずに設定された点だ。市場関係者からは、この強気の価格設定に対し、モーニングスターが「公正価値は公募価格の約半値」と評価するなど、割高感を指摘する声も出ている 。
SpaceXのS-1提出書類は、同社を単なるロケット打ち上げ企業ではなく、AIインフラ企業として再定義している。2026年2月2日には、イーロン・マスクが設立したAI企業「xAI」の買収を完了し、SpaceX内のAI部門として統合した 。
同社がS-1で主張する総アドレス可能市場(TAM)は、「人類史上、最も行動可能な市場規模」と称する28.5兆ドル(26.5兆ドルではない)。その内訳は、ロケット打ち上げ・宇宙サービスがわずか3,700億ドル、スターリンク接続サービスが1.6兆ドルで、残りの大半は軌道上AIコンピューティングインフラから生み出されると試算されている 。
SpaceXは、地球低軌道に約100万基のAI衛星からなるネットワークを配備する計画をFCC(米国連邦通信委員会)に申請している 。AI1は、この超巨大コンステレーションの最初のバージョンと位置付けられている。既存のスターリンク衛星網だけでも、衛星数や周波数利用に関する規制上の制約に直面しており
、AI衛星網の追加承認を得るには前例のない規模の許認可プロセスが必要となる。
野心的な計画の裏には、多くの技術的・財務的ハードルが存在する。
SpaceXの事業は、もはや「宇宙開発」の枠を超え、AIインフラへの人類史上最大の賭けとも言えるフェーズに入った。2026年6月12日の上場は、その壮大な実験へのスタート地点となる。
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