参加部隊
演習を統括したのは陸軍第10軍団である。具体的には、第58砲兵指揮部、第586連合作戦旅団、第234機械化歩兵旅団が中核となった。なお、2026年1月に同じ台中の新社区で行われた同第10軍団の即応訓練では、第602航空旅団も参加しており、この中部防衛区における陸軍地上戦力と航空戦力の緊密な統合が図られている 。6月の演習でも、海軍や空軍との統合作戦調整が求められた
。
6月9日の演習には、台湾の防衛態勢の変化を示す3つの特徴が鮮明に表れていた。
1. 極端に短い準備時間
部隊は、あらかじめ日程が決められた「発表会」ではなく、緊急の侵攻警報に近い「ポップアップ」形式のタイムラインで陣地に進入した。軍当局はこれを「リハーサルの機会が限られた、より現実的な戦闘シナリオ」と位置づけている 。
2. 全天候下での実動
記録的な豪雨の中で実弾射撃が強行され、装備の確実性と兵士の耐久力が試された。示されたメッセージは明確だ。「侵攻が天候を待ってはくれないのと同様、防衛側も天候に左右されない」という決意である 。
3. 広域分散射撃とリアルタイム統制
20キロメートルに及ぶ正面の8か所の異なる射撃陣地から同時射撃を行ったことで、部隊は実戦的な通信、標的調整、誤射防止の統制をストレスのかかる中で実践した。これは、過去の単一の射撃場で行われていた、綿密に振り付けられた実弾展示とは一線を画すものだった 。
今回の訓練方針の転換は、何もないところから生まれたわけではない。中国は2025年末の「正義の使命2025」(12月29〜30日)と称する大規模演習で、台湾の海空封鎖をシミュレートし、水陸両用部隊による港湾制圧を訓練した 。
それから数日のうちに迎えた2026年1月には、中国人民解放軍(PLA)が極超音速ミサイルやステルス航空機、そして約1兆9000億円(130億ドル)相当と見積もられる最新鋭駆逐艦隊を台湾近海に展開させ、大規模な統合演習を開始した 。中国海警局の船艇による「グレーゾーン」作戦も激化しており、馬祖や烏坵などの離島領海付近に1.3海里(約2.4キロメートル)まで異常接近する事態も発生している
。
顧立雄(ウェリントン・クー)国防部長(国防大臣に相当)は2026年2月、恒常化する軍事的・準軍事的圧力に対し、国民が「鈍感」になってしまうリスクを警告しつつ、脅威は「緊急」であり、継続的な高度即応態勢の維持が不可欠との認識を示した 。
台中での大規模沿岸防衛演習は、台湾軍が2026年に展開する広範な防衛強化計画の中でも、特に注目度の高いものだった。
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