特筆すべきは、この調達が株式ではなく、Morphoの暗号資産トークン(MORPHO)を購入する「トークンセール」形式で行われた点だ 。これは、出資者がプロトコルのトークンエコノミーに直接参加し、長期的な成長を共有する意思を示していることを意味する。MorphoのCEO、ポール・フランボット氏はFortune誌の取材に対し、「投資家はトークンの月間平均価格で購入し、正確なコストは各参加者がいつ資金を投入したかによって異なる」と語っている
。
| ラウンド | 時期 | 調達額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シードラウンド | 2022年半ば | 約18億円($18M) | DeFiのプレシードとしては当時最大級。a16zクリプトが主導 |
| 戦略的トークンセール | 2025年末~2026年初頭 | 約50億円($50M) | 50以上のファンドが参加。リビット・キャピタルが主導 |
| 最新ラウンド | 2026年6月9日 | 約175億円($175M) | パラダイム、リビット、a16zクリプトが共同リード |
Morphoの成長は、資金調達額以上に、その利用実態を示す数字に表れている。
この急成長の背景には、Morphoが単なるアプリケーションではなく、**金融機関が自社の融資商品を構築するための「インフラ」**として機能しているという構造がある。
Morphoが「DeFi版クレジットインフラ」として選ばれている証拠が、以下のパートナーシップ群だ。
米最大の暗号資産取引所であるコインベースは、ビットコイン担保ローンを含む暗号資産担保ローン商品の裏側でMorphoを利用している。この統合により、2025年1月の時点でMorphoのTVLは約4000億円に押し上げられた。2025年第3四半期には、コインベースのDeFiレンディングはローンベースで10億ドルを突破した 。
これはDeFi史上、画期的な出来事である。グローバルなシステム重要性銀行(G-SIB)に指定される仏金融大手ソシエテ・ジェネラルのデジタル資産子会社であるSG-FORGEが、自社のMiCA(欧州暗号資産規制)準拠ステーブルコイン「EURCV」と「USDCV」の貸借機能をMorpho上で提供することを決定した 。これは、欧州の主要銀行が初めてDeFiレンディング分野に本格参入した事例として、金融史上に残る出来事だ。
2026年5月、StripeやParadigmが出資するステーブルコイン決済チェーン「Tempo」が、Morphoのレンディングマーケットプレイスを統合。これにより、企業向けに約7,500億円($7.5 billion)のオンチェーンレンディング能力が解放された。この統合は2026年5月18日に本番稼働している 。
今回の資金調達に参加しただけでなく、アポロはMorphoとの協業協定を締結し、今後48カ月かけて最大9,000万MORPHOトークン(総供給量の約9%)を取得する権利を確保した。これは、単なる投資ではなく、Morpho上のレンディングマーケットや信用インフラ構築を共同で推進するための戦略的提携である 。
2026年6月8日、資金調達発表の前日、Morphoは機関投資家の需要に応える新プロトコル「Morpho Midnight」を発表した。これは、固定金利かつ期間を定めたタームベースのレンディングプロトコルであり、予測可能性の高いオンチェーンクレジットを求める機関投資家のニーズに照準を合わせている 。これは、伝統的な金融市場で一般的な債券やタームローンの仕組みを、DeFi上で再現する試みと言える。
今回の資金調達に関する公開情報の中には、ポール・フランボットCEOが「IPO(新規株式公開)を目指す」と明言した直接の発言は見当たらなかった。しかし、約175億円のトークン調達と約2000億円の評価額は、Morphoを将来的な株式市場へのデビューが極めて現実的なポジションへと押し上げている。
背景にあるのは、2025年から2026年にかけての大手暗号資産インフラ企業によるIPOの波だ。
Morphoの約175億円の調達、約2000億円の評価額、そしてコインベースからソシエテ・ジェネラル、アポロに至るパートナー陣容は、同プロトコルをDeFiの中でも最も機関投資家との結びつきが強い存在へと押し上げた。Vaults V2へのアップグレードとMorpho Midnightの立ち上げは、規制された予測可能なオンチェーンクレジットを求める機関投資家の次の波を捉えるために設計されている。