この目を引く黒字額は、見かけ以上に大きい。急減したエネルギー輸入の影響を除けば、原油以外の輸入の伸びはさらに強いものとなり、これは内需低迷による「悪い黒字」ではなく、供給ショックによる「特殊な黒字」であることを物語っている。
輸出の好調を支える最大の要因は、世界的なAI向けハードウェアの旺盛な需要だ。貿易品目の中心は、集積回路やメモリチップといった半導体だった。
集積回路の輸出は、輸出量の増加に加え、メモリ価格の高騰で輸出単価が55.7%上昇したこともあり、2026年初頭には前年同期比で約73%も急増した 。シンガポールの英字紙『ストレーツ・タイムズ』は、AIハードウェア需要が「イラン戦争による混乱を相殺し」、3カ月ぶりの高い輸出の伸びを可能にしたと報じている
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また、二つの構造的要因が前年比の成長率を押し上げた。一つは有利なベース効果だ。関税を巡る不確実性や世界的な製造業の減速に見舞われた2025年5月が低調だったため、現在のデータがパーセンテージで大きく見える 。もう一つは、海外バイヤーによる前倒し発注だ。イラン紛争が部品や物流コストを最終的に押し上げることを懸念した輸入業者が発注を急ぎ、中国の輸出を5月に前倒しさせたのである
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輸出が好調な一方で、中国の原油輸入は、通常なら深刻な景気後退を示唆するレベルにまで急減した。しかし、その原因は完全に地政学的なものだ。
調査会社ケプラーの追跡データによると、海上輸送による原油到着量の落ち込みはさらに劇的で、5月は日量636万バレルと、ほぼ10年ぶりの低水準だった。これは、米国とイスラエルが2月28日にイランを攻撃する前の最後の平月であった2月の日量1139万バレルのほぼ半分に過ぎない 。特に中東産原油の輸入は、4月に日量215万バレルと、約14年ぶりの低水準にまで急減した
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ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、中国の原油輸入の約4分の1を占めるペルシャ湾岸諸国からの通常の供給ルートを遮断した 。しかし、北京は高価な代替原油をスポット市場で買い漁る代わりに、意図的な政策転換を行った。石油元売り各社に操業度を下げさせ、国家石油備蓄(SPR)を取り崩すことで、外貨を節約し、世界的な原油価格の高騰を招かない道を選んだのである
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ロンドンに拠点を置くコンサルタント会社エナジー・アスペクツは、中国の2026年の原油輸入量は平均で日量約1090万バレルと、新型コロナウイルスのロックダウン以来の低水準になると予測し、今回の戦争が「需要が消え去った程度を露呈させた」と指摘している 。
ホルムズ海峡の遮断は、二次的な貿易の変化も連鎖的に引き起こした。
この中国の黒字の規模とその中身(鉄鋼、化学製品、クリーンテック、自動車などの工業製品輸出の持続的な洪水)は、すでにくすぶっていた欧州との貿易摩擦に拍車をかけている。EUはこれを自国の産業基盤に対する存亡の危機とみなしており、5月の貿易統計はタカ派にとって格好の材料となった。
中国の記録的な黒字は、経済全体の一様な強さを示す指標ではない。それは、AI半導体という輸出マシンがフルスロットルで稼働する一方、戦争による封鎖でエネルギー輸入のエンジンが停止するという、まさに「分割画面」の様相を呈している。原油輸入の崩壊は機械的に貿易収支を押し広げ、堅調な工業需要を反映した「本来の」原油以外の輸入の強さを見えにくくしている。同時に、北京は国家石油備蓄の放出とロシア産原油への計画的なシフトによってエネルギー危機を乗り切ろうとしており、これらの政策が輸入額をさらに抑制している。
その余波は欧州で顕在化しつつある。2025年の過去最大の年間1.2兆ドルの黒字に加え、今回の黒字の規模の大きさが、現状はもはや持続不可能だという確信をEUの政策担当者に与えたのだ 。EUが準備する新たな通商政策の数々は、一時的な小競り合いではなく構造的な対立へのエスカレーションであり、2026年後半の世界貿易環境がより熾烈な争いの場となることを予感させる。