ファラデー回転とは? — 直線偏波した電波が、磁場を帯びたプラズマ(電離ガス)の中を通過すると、偏波面が回転する現象。回転の大きさ(ファラデー回転量度、RM)は「磁場の強さ×電子密度×経路長」に比例するため、遠方銀河からの電波の回転量を測れば、その間に存在する磁場の強さと位置を立体的に再構築できる 。
研究チームはASKAPの広帯域(800~1087 MHz)と細かい周波数分解能を活かし、約400万個の銀河すべてについてRMを収集。従来のRMカタログ(約10万個)と比べて約40倍の情報量を持つデータセットを構築した 。平均RM誤差はわずか2.2 rad/m²、ソース密度は1平方度あたり約7個で、RMグリッドの「解像度」は約23分角に達する
。
「この20年間、天文学者たちは事実上、たったひとつの同じデータセットでやりくりしてきました。しかも、それは南天すらカバーしていなかったのです。」
SPICE-RACS DR2は、その状況を根底から覆した。
SPICE-RACSは、**POSSUM(Polarisation Sky Survey of the Universe's Magnetism)**国際共同研究の初期成果である 。POSSUMの目標は、(1)約3万平方度に及ぶ包括的RMグリッドの構築、(2)天の川銀河磁場の詳細研究、(3)銀河・銀河団・宇宙網の磁場の探査、の3本柱
。
遠い未来(SKA):2020年代末に初期運用が始まるSKA(平方キロメートルアレイ)電波望遠鏡は、宇宙磁場を桁違いの解像度で描き出す。SKAが掲げる5大重要科学課題のひとつが「宇宙磁場」であり、ASKAPはその直系の前駆望遠鏡である。SKAが建設される西オーストラリアの地は、まさに今回のSPICE-RACSを生んだ場所でもある 。
今回のマップは、長らく「解決不可能」とさえ言われた根源的な謎に、初めて実証的な道を開いた。
SPICE-RACSの全データはCSIROのデータアクセスポータルを通じて誰でも自由に利用可能であり、すでに世界中の研究者が新たな発見に乗り出している 。宇宙磁気学は、今まさに「20年続いた冬」を抜け、前人未到の探査の夏を迎えたのである。
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