USGSの最新報告書「Mineral Commodity Summaries 2026」によれば、ロシアの2025年の金鉱山生産量は約310トンと推定されている。一方、WGCは調査会社メタルズ・フォーカスのデータを基に、ロシアの同年の生産量を330~345トン程度と見積もっている
。
つまり、コズロフ氏が示した485トンという数字は、これらの独立推計を40〜50%も上回る。もし本当に485トンを生産していれば、中国の約380トンを軽々と抜き去り、ロシアが現代史上初めて世界最大の産金国になる計算だ
。
しかし実態はどうか。2024年から2025年にかけて、ロシアで大規模な新規金鉱山が操業を開始したという報告はない。むしろ、西側の制裁により採掘機械や高度技術の供給は制限されている。複数のロシア大手金鉱企業が個別に報告している生産量を合算しても、485トンには遠く及ばない。このため、業界幹部からは「入手可能なデータと全く整合しない」と首をかしげる声が上がっている。
銀の生産見通し2,800~3,000トン、白金族金属134~137トンという数字については、直接比較できる独立データが乏しい。USGSもWGCも、2025~2026年のロシアに特化した銀・PGMの詳細推計を現時点で公表していない。2022年時点の直近データによれば、ロシアは世界のPGM鉱山生産の約23%を占め、パラジウムでは約43%、プラチナでは約11%のシェアを持つ重要生産国だった。しかし、国内最大手のノリリスク・ニッケルは2024年以降、PGMの総合生産量の公表を停止しており、独立検証のハードルはさらに高まっている
。
それ以降、西側の制裁でロシアはロンドンやチューリッヒといった伝統的な金取引市場から締め出され、金の輸出ルートは第三国経由に変更された。その結果、第三者による生産量や輸出量の監査は事実上不可能になっている。
企業別の生産報告、監査済み貿易データ、現地調査――こうした独立検証に必要な手段は制裁と国家機密の壁によって閉ざされている。このため、アナリストたちはコズロフ氏の数字が実際の鉱山生産なのか、あるいはリサイクル品や零細採掘量、あるいは地質学的確認埋蔵量の数字を混ぜたものなのか、判断できないでいる。
最大の矛盾は、政府系ファンドと中央銀行の金準備が急速に取り崩されている事実だ。クレムリンが「記録的生産」を喧伝するまさにその時、ロシア当局は戦争継続のための資金捻出に必死で、虎の子の金を売り急いでいる。
もしロシアが本当に年間485トンもの金を生産していれば、これは世界の年間鉱山供給量の約15%を国内に抱え込む計算になる。それにもかかわらず、国家備蓄の金を2002年以来のハイペースで売り急いでいるのは、明らかな矛盾だ。アナリストらは、このちぐはぐな現実が「生産量の水増し」か「制裁下での輸出ボトルネック」、あるいはSPIEFを前にした「強がりの政治的演出」を示唆していると見る。
コモディティ・アナリストや鉱業幹部の間では、次の3つの説明が主流だ。
ロシアが2025年に485トン、2026年に最大500トンの金を生産した(する)というコズロフ氏の主張は、独立機関の推計を40~50%上回っている。事実ならロシアは世界最大の金生産国となるが、それを支える企業データは非公開で、制裁下の技術制約も増産には不利に働く。そして何より、国家が保有する金を記録的ペースで売り急ぐ姿は、増産の強気主張と全くかみ合わない。
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