外貨準備における不動の2番手: ユーロは引き続き世界第2位の準備通貨としての地位を維持しています。2022年時点で世界の外貨準備全体の約20.5%を占めていましたが、2025年もさまざまな指標でシェアは約20%前後で安定して推移しました 。しかし、これは依然として約58%のシェアを持つ米ドルとは大きな差があることも事実です 。
今回の報告書の公表にあたり、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は、現状に対して極めて厳しい認識を示しました。彼女は「現状に甘んじている余裕はない。国際通貨システムにおける断片化の力は、これまで以上に顕著になっている」と明言しました 。
ここでの「断片化」とは、米国発の関税引き上げなどの保護主義的な通商政策や地政学的な緊張の高まりにより、グローバルな経済・金融の結びつきが分断されつつある状況を指します。ラガルド総裁は、こうした流れが投資家の信頼を損ない、ユーロのような通貨を困難な立場に追い込む可能性があると指摘しています 。
ユーロがこの「断片化」の荒波を乗り越え、真に国際的な通貨へと進化するために、ラガルド総裁は欧州に対して以下の構造改革を急ぐよう求めました。
報告書がカバーする2025年には、国際金融市場で大きな動きがありました。それはドル安の進行です。ECBの観測によれば、2025年3月以降、米ドルはユーロに対して測定可能なほど減価しました 。
このドル安の背景には、米国の政策運営に対する不確実性の高まりや、伝統的に国際通貨システムの「要」であった米ドルの支配的な役割に対する信認の揺らぎがあります 。
ラガルド総裁や他のECB高官は、この地殻変動がユーロにとって国際的な役割を拡大する「機会」となり得ると認めています 。しかし、それは自動的に訪れるものではありません。ユーロがドルに代わる信頼できる国際通貨としての地位を「獲得」するためには、前述の構造改革、そして強固な法の支配と経済的強靭性(レジリエンス)が不可欠であると強調されています 。
ECBの25回目の年次評価は、2025年のユーロがグリーンボンド市場でのリーダーシップ獲得など、重要な一歩を踏み出したことを示しました。しかし、国際通貨としての現実は依然としてドルの後塵を拝しており、その差は大きいままです。
地政学的な「断片化」の嵐が吹き荒れる中で、ラガルド総裁のメッセージは明確です。ドルの先行き不透明感が生み出す「グローバル・ユーロ」への追い風を捉えられるかどうかは、欧州自身が経済・金融統合という「宿題」をどこまでやり遂げられるかにかかっています。