その最大の狙いは、米国と中国のテクノロジーへの依存から脱却し、「自らの命運を自らの手に取り戻す」ことに他なりません 。
以下に、その主要な構成要素を詳しく解説します。
Chips Act 2.0は、2023年に成立した初代Chips Actの抜本的なアップデートです。初代が工場建設など「供給サイド」への補助金に重点を置いたのに対し、2.0ではベクトルが大きく変わります。
本提案は、2035年までに官民合わせて1200億ユーロ(約20兆円)の半導体投資を動員する目標を掲げています。これは、初代Chips Actの430億ユーロ目標から大幅な拡大となります 。
最も重要な変化は、政策の重心が供給から「需要の喚起」に移ることです。EUは、欧州製チップの「買い手」を育成することに本腰を入れます 。
欧州委員会は、EU加盟国政府や公共機関に対し、欧州のスタートアップ企業が設計・製造したチップを優先的に購入するよう促す方針です。これは、事実上の「欧州産チップ優先調達制度」と言えます 。
さらに、チップメーカーとユーザー企業を需要契約で結びつける「デマンド・アクセラレーター」構想も盛り込まれています 。
法案には、供給不足が深刻化した場合の緊急対応策も含まれます。EUが戦略的なチップの一括購入を調整したり、半導体メーカーに対し、既存の契約よりも「危機に不可欠な製品」の注文を優先するよう強制できる権限を盛り込む可能性が報じられています 。
CADAは、欧州がクラウドコンピューティングとAIの基盤で自立するための枠組みです。その核心は、安全保障上の機密データを米国企業の管理下に置かないことにあります。
CADAは、データの機密性に応じてクラウドサービスを分類する「4階層」の枠組みを導入すると見られています。最も機密性の高い階層では、医療、金融、司法といった分野の政府データの取り扱いが、事実上、欧州のクラウド基盤に限定される可能性が高いです 。
これは、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud といった米ハイパースケーラーにとって、EUの公共部門という巨大市場へのアクセスが大幅に制限されることを意味します。
CADA法案は、以下の3本柱で構成されます 。
この強硬策の背景にある最大の論拠が、**2018年に成立した米国の「CLOUD法」**です。この法律は、米国の捜査当局が、データの保管場所が世界中のどこであろうと、米国企業に対し顧客データの開示を強制できる権限を定めています 。
EU当局者は、このCLOUD法の存在こそが、欧州市民や政府の機密データを米国企業のインフラから切り離さなければならない根本理由だと説明しています 。
このパッケージ全体は、欧州が「米国テックとの決別(break up with US tech)」を図る動きとして広く報じられており 、米国発のデジタルインフラへの依存度を大幅に引き下げる狙いがあります。同時に、中国製半導体への依存低減も重要なターゲットです 。
ブリュッセルは、この動きを「他国の政権の気まぐれ(whims of foreign governments)」に振り回される脆弱性への必然的な対応と位置づけています 。これは、近年の米国の政治的な不安定さが、欧州の危機感を一層強めた結果と言えるでしょう。