こうした不透明感こそが、原油、欧州債券、そして中央銀行の金融政策期待を揺さぶり続ける震源となっている。
世界の石油供給の約2割が通過するホルムズ海峡の封鎖は、原油市場に戦争リスクプレミアムを織り込ませる最大の要因だ 。国際指標であるブレント原油の価格は、停戦に関するあらゆる断片的なニュースで乱高下してきた。
月前半には、イランの巡航ミサイルがUAEのフジャイラ石油ハブを攻撃し、ブレント価格が1バレル114ドル超に急騰する場面もあった 。ゴールドマン・サックスは、仮に海峡の通航が正常化したとしても、戦前の水準にすぐ戻ることはなく、2026年末時点でブレント価格は戦前比約20ドル高い90ドル台との見通しを示している
。
ユーロ圏の国債利回りは、停戦への楽観論とほぼ完璧な逆相関で動いてきた。そのロジックは単純だ。和平が近づけばエネルギーコストの低下が期待され、インフレ懸念が後退し、欧州中央銀行(ECB)への利上げ圧力が弱まる。逆に交渉が停滞すれば、利回りは跳ね上がる。
ドイツ連銀(ブンデスバンク)の2026年5月月報は、4月の初期停戦後に市場のリスク選好や株価評価が顕著に回復したと指摘する一方、エネルギー価格に関する最悪のシナリオが依然としてくすぶっていると警告を発している 。
金融市場が5月下旬時点で織り込むECBの年内利上げ回数は 2回 と、5月中旬時点の3回からトーンダウンした 。ECBの預金ファシリティ金利は12月までに約2.59%と、月前半に予想されていた2.75%から低下している
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戦争が始まる前、投資家はECBの金利据え置きを予想していた。しかし、紛争によるエネルギーショックがインフレ圧力として上乗せされ、その見通しの修正を余儀なくされたのである 。ECBのイザベル・シュナーベル専務理事は、たとえ和平合意が成立したとしても、インフレリスクは地政学だけの問題ではないとして、ECBが6月に利上げを実施すべきとの見解を示している
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この紛争は、トランプ大統領の支持率に明白な打撃を与えている。2026年5月の各種世論調査は、その厳しい現実を映し出している。
戦時下では「旗の下に集結する」効果が期待されるが、この戦争ではそれが見られない。シルバー・ブレティンの世論調査平均によると、戦争への純支持率は戦争開始時の約-9ポイントから、-22.8ポイント へと急落している 。
市場参加者にとって、あらゆる停戦報道は最大の変数が「人間の判断」――現在、その確率は五分五分とされている大統領の決断であることを思い知らせるサインであり続けている。