しかし、水面下で起きているのは、DSAが企業に義務づける「誠実な関与」とは程遠い現実です。ACEは、透明性レポートの中で、Metaが案件の問い合わせに返答する場合でも、「回答が遅すぎる」「必要な情報が欠けている」 と痛烈に批判しました。2025年8月末までに、ACEがFacebookとInstagramについて下した「覆し裁定」のうち、Metaが実際に履行したのは「約半数」。これは、約100件ものケースで、Metaが独立機関の判断を事実上、黙殺したことを意味します
。
問題の根源は、法律の設計そのものにあります。DSA第21条に基づき認証されたACEのような裁判外紛争解決(ODS)機関は、プラットフォームの決定を審査する権限を与えられていますが、その裁定には法的拘束力が一切ありません。プラットフォームには「誠実に対応する」義務があるとされていますが、実効性のある強制力が伴わなければ、この「誠実さ」は企業の善意に依存する空虚なスローガンになりがちです。
欧州委員会がMetaに対して手をこまねいているわけではありません。政治コンテンツの表示抑制、研究者への不十分なデータアクセス、未成年者保護の欠如など、すでに複数のDSA違反調査が進行中です。2026年4月には、MetaがFacebookとInstagramから13歳未満の子どもを十分に排除できていないとして、同社の年間世界売上高の最大6%に達する可能性がある制裁金の予備的見解を発表しました
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実際、2025年だけでも、ブリュッセル(EU)は巨大テック企業に対して**最低でも約37.7億ユーロ(約6000億円)**の制裁金を科しており、これはDSAおよびデジタル市場法(DMA)という新たなルールに「本気の罰則」が伴うことを示した年でした。
しかし、これらの巨額制裁は組織的なコンプライアンス違反を対象とするものです。ベルリンやバルセロナで「自分のFacebookアカウントを返してほしい」と願う一個人にとって、ACEのプロセスに「強制力」がないという現実は、依然として変わりません。
ACEのような独立審査への需要は、疑いようのない本物です。開設以来、累計で3万件を超える苦情が寄せられ、EU全域のユーザーが「不透明で自動化されたプラットフォーム司法」に代わる手段を切実に求めていることを証明しました。同センターの利用はユーザーにとって無料であり、従来の司法手続きでは不可能なスピードで裁定が下されます
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しかし、ACEの経験は、現行のDSAフレームワークの限界をも明らかにしています。組織的なモデレーションの誤りを可視化し、プラットフォームの不誠実な対応の公的記録を作成することには成功しました。しかし、Metaや他のプラットフォームに対し、実際に行動を変えるよう強制する力はありません。
「誠実な対応を怠った」という理由でプラットフォームに制裁金が科されるか、ODS機関の裁定に法的拘束力が認められるまでは、この制度は「治療」を伴わない「診断」を提供することになります。ユーザーは、Metaがいつ、どこで、どのように自分を不当に扱ったかを正確に知ることはできます。しかし、損害を回復するかどうかの最終決定権は、いまだMeta自身の手中にあるのです。
(本記事は、Appeals Centre Europeの透明性レポート、EUの規制文書、および複数の現地報道に基づき、日本の読者向けに再構成したものです。記載されたデータは2026年5月時点の公表情報に依拠しています。)
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