構造も、海底に大規模な基礎工事を必要とする従来型とは一線を画す。モジュール式で水面付近に設置できる設計のため、導入時の土木工事を大幅に簡略化できる可能性がある 。また、ギアボックスや回転軸のシールといった複雑な機構が不要なため、故障リスクが低く、メンテナンス費用も抑えられると期待されている
。
しかし、最大の市場的優位性は、従来技術では利用できなかった海域を「資源」に変えられる点にある。既存の水平軸・垂直軸タービンは、経済性を確保するために高流速の「狭くて深い海峡」を必要とした 。一方、Caudalの振動翼は、より流速が遅く水深が浅い「中流速サイト(mid-flow sites)」向けに設計されている。これにより、これまで「遅すぎる」と見過ごされてきた世界中の沿岸域が、一気に発電適地として浮上する可能性を秘めている
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環境面でも、高速で回転するブレードに比べ、相対速度の遅い振動翼は魚類や海棲哺乳類との衝突リスクを低減できる可能性が指摘されている。ただし、この点は現在も環境影響評価が進行中であり、実海域での検証が必要だ 。
今回の調達で、Caudal Energyの累計資金調達額は550万ポンドとなった 。この資金は、北アイルランドにあるストラングフォード湾(Strangford Lough)の潮流試験サイトでの、フルスケール試作機の実証試験に充てられる。
ストラングフォード湾は、潮流発電の実証地として長い歴史を持つ。世界初の商業規模の潮流タービン「SeaGen(1.2MW)」が2008年に設置された場所であり、近年もORPCやクイーンズ大学ベルファストが次世代タービンの試験を実施してきた、いわば「聖地」だ 。
現在、Caudalの技術は「技術成熟度レベル(TRL)5」にある。これは、実験室ではなく、実環境に近い関連環境での検証が完了した段階を意味する 。ストラングフォード湾での試験が成功すれば、システムが完成し、実際の運転条件下で認定されたことを示す「TRL 8」へと一気にステップアップする。そして、同社が目標として掲げる2028年の初の商業展開が、一気に現実味を帯びてくる
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投資家の期待も大きい。追加出資に踏み切ったZero Carbon Capitalは、「よりシンプルで、よりスマートで、商業的にスケールしやすい海洋エネルギーへのアプローチを実現する」チームの能力への「信任票」だとコメントしている 。
ただし、ここには注意深く見守るべき条件がある。Caudalのシステムは、まだ実海域でフルスケールの発電を行ったことがないのだ。ストラングフォード湾での試験は、技術の成否を分ける関門となる。モデル通りの発電効率を達成し、過酷な塩水環境での耐久性を証明できれば、2028年の商業化は現実的なものになる。しかし、もし効率や耐久性が目標値を下回れば、スケジュールの遅延は避けられない。
潮流発電の歴史には、有望なコンセプトが実験室での検証段階から、厳しい海洋環境での現実に飛び込む際に頓挫した例が数多く刻まれている。Caudal Energyも今、まさにその壁に挑もうとしているのだ。