またこの取り組みは、米ASEANの包括的戦略パートナーシップ(Comprehensive Strategic Partnership)の一環でもある。両者は2027年の外交関係50周年を節目として、デジタル・経済協力をさらに拡大させる計画だ。
今回の会合で特に注目されたのが、米国主導のPax Silica(パックス・シリカ)構想だ。
この構想は、AI時代の基盤となるテクノロジー供給網を安全かつ強靭なものにすることを目的とする国際的な協力枠組みで、主に以下の分野で連携を進める。
シンガポールを含む複数の国がすでにPax Silica宣言に参加しており、投資協力や技術連携、供給網の安全確保を進めている。
AIの発展は、ソフトウェアだけでなく物理的な産業基盤に大きく依存している。例えば、
こうした分野の供給が不安定になれば、AI開発そのものが影響を受ける可能性がある。
そのため今回の会合では、東南アジアとの協力によって信頼できるインフラと分散化された半導体供給網を構築する必要性が強調された。
もう一つの柱が、**U.S. AI Exports Program(米国AI輸出プログラム)**だ。
この取り組みは、米国のAI企業がインド太平洋地域で製品やサービスを展開しやすくすることを目的としている。外交ネットワークを活用し、政府や企業とのマッチングを支援する仕組みが整えられている。
具体的には、世界約270カ所の米国外交拠点が、
といった支援を行い、AI技術の国際展開を後押しする。
政策面では、安全で信頼できるAIのルールづくりも重要な議題となった。
米国とASEANはすでに2024年、AIの責任ある開発と利用を促進する共同声明を採択している。
さらにASEAN内部では、加盟国の政策協調を進めるために**AIガバナンス作業部会(WG‑AI)**が活動しており、政策対話や能力強化プログラムなどを通じて地域のAIルール整備を進めている。
閣僚会合では、こうした既存の取り組みを基盤に、国際的なAI規制や標準が進む中での連携を継続する方針が確認された。
議論は地政学やインフラだけでなく、企業による実際のAI活用にも及んだ。
東南アジアでは特に中小企業(SME)が、次のような課題を抱えている。
そのため会合では、研修や技術パートナーシップ、ツール提供を通じて中小企業のAI導入を支援するプログラムも検討された。
これは、AIの利益が一部の巨大テック企業や都市圏に集中するのではなく、地域全体の経済成長につながるようにするというASEAN側の戦略とも一致している。
初の米ASEAN AI閣僚会合は、AI協力を単なる研究交流から包括的なテクノロジー戦略へと引き上げた。
議論された分野は、AIエコシステムのほぼすべてをカバーしている。
これらの取り組みは、2027年の米ASEAN関係50周年に向けて、AIを両地域関係の中心テーマに据える流れを示している。
つまり今後の米国と東南アジアの協力は、外交や貿易だけでなく、AIとその産業基盤をめぐる経済・安全保障の連携によって大きく形作られていく可能性が高い。