中国が強い理由は構造的です。
・巨大なバッテリー供給網と部材産業
・大規模生産によるコスト低減
・国内メーカー同士の激しい価格競争
・政府による電動化政策の後押し
結果として、中国メーカーは低価格EVを海外市場へ輸出し始めており、価格に敏感な新興国市場で急速に存在感を高めています。
欧州もK字の上昇側にあります。
中国を除く市場の中では特に成長が速く、ある期間では前年比約32%のEV販売増が確認されています。
欧州でEV化が進む背景には次のような要因があります。
・自動車メーカーに課される厳しいCO₂排出規制
・ガソリン価格の高さ
・都市部中心の交通環境
・EVモデルの選択肢拡大
これらの要因により、欧州ではEV化が単なるトレンドではなく産業構造として必然化しています。
中国と欧州に加えて、新興国市場も急速に拡大しています。
特にラテンアメリカや東南アジアでは、中国メーカーの低価格EVが普及の起爆剤になっています。
例えばラテンアメリカでは、EV販売がある年に約75%増加したと報告されています。
多くの新興国では、価格の安い中国EVが欧米メーカーよりも競争力を持つため、これらの地域はガソリン車中心の段階を飛び越えて**直接EVへ移行する「リープフロッグ現象」**が起きつつあります。
一方、米国市場は明確に異なる動きを見せています。
EVは新車販売の約10%前後で、ここ数年ほぼ横ばいとなっています。
主な理由として指摘されるのは次の点です。
・EV価格が依然として高い
・充電インフラの地域格差
・ピックアップトラック中心の市場構造
・政策の不確実性
大きな転換点となったのが政策変更です。
米国では最大7,500ドルのEV購入税額控除が存在していましたが、この制度は2025年9月30日に終了しました。
この制度はEVとガソリン車の価格差を埋める重要な政策でした。終了により、多くのEVが実質的に数千ドル値上がりした形になりました。
さらに米国は、中国製EVの流入を強く制限しています。
中国製EVには約100%の関税が課されており、さらにコネクテッドカー技術などを理由にソフトウェアや車載技術への規制も強化されています。
これにより米国内の自動車メーカーは低価格競争から守られますが、同時に海外で普及を加速させている低価格EVに米国市場がアクセスできないという状況も生まれています。
この構造は、米国にとって複雑なトレードオフを生みます。
保護政策は短期的には国内メーカーを守り、自社EV技術を育てる時間を与えます。しかし同時に、競争圧力が弱まり、EVの価格低下や技術革新が遅れる可能性もあります。
その間にも中国メーカーは世界市場で販売を拡大し、
・生産規模
・バッテリー技術
・車載ソフトウェア
といった分野で経験とコスト競争力を積み上げています。
もしK字型の構造が続けば、自動車業界全体にも影響が及びます。
EVスタートアップにとっては、国内需要の弱さが
・工場稼働率の低下
・1台あたりコストの上昇
・資金調達の難化
といった問題につながる可能性があります。
既存自動車メーカーの場合も、ガソリン車(特にSUVやトラック)で短期利益を守れる一方で、次の分野で遅れを取るリスクがあります。
・バッテリー生産
・ソフトウェア中心の車両設計
・低価格EVプラットフォーム
・グローバル供給網
EVが将来の自動車市場の中心になる場合、早く規模を拡大した企業ほどコスト優位を確立する可能性が高くなります。
結論として、世界のEVシフトは減速しているわけではありません。
むしろ起きているのは地域ごとの分岐です。
中国、欧州、新興国では政策支援、価格競争、産業基盤を背景にEV化が急速に進んでいます。一方、米国では政策変更や貿易制限、市場構造の違いにより、より慎重なペースになっています。
この分岐こそが、いま世界の自動車業界で語られている**「K字型EV市場」**なのです。